2014年11月29日土曜日

日本軍 近代の歩兵戦法 (一)

日露戦争時の攻撃陣地

明治後期の戦闘方式

 明治期の戦闘は時期ごとに違いはあるものの、概ね密集隊形で運動し、敵火を受ける前に散開隊形に移り散兵線を作り、射撃を行いながら敵との距離を詰めていき、最終的には突撃でもって戦闘を終えるという流れである。以下、基本的に明治42年の歩兵操典を基に記述。

2014年11月23日日曜日

日本軍 近代の歩兵戦法 序

昭和十五年 歩兵操典 綱領


典範令と歩兵操典

典範令は操典・教範・要務令その他を総称したもので、歩兵操典は典範令でいう典にあたる。
この典範令に関して、作戦要務令では綱領第十一、各操典では綱領第十二に「戦闘ニ於テハ百事簡単ニシテ且精錬ナルモノ能ク成功ヲ期シ得ベシ典令ハ此ノ趣旨ニ基キ軍隊訓練上主要ナル原則、法則及制式ヲ示スモノニシテ……」と記述されている。
  典範令用語ノ解[作戦要務令ノ部](田部 聖・奥田 昇 共編)によると、

原則】は「兵語にては戦闘原則のこと(中略)本令第二部に示すものは全部之に属す。」

法則】は「戦闘原則を実施する為必要な定めである。例えば本令第一部及第三部の大部分の事項はこれに属する。」

制式】は「原則、法則を実施する為の一定の形式及動作をいふ。各操典及教範に示されたる事項の大部分は之に属す。」

と解説されている。※本令は作戦要務令のこと


また、昭和十五年印刷 『戦術学教程 巻一』にも【操典ノ制式】、【操典ノ法則】、【戦闘原則】の兵語の解が記載されている。

「操典ノ制式トハ操典ニ規定セラレタル一定ノ形式及動作ヲ謂フ」

「操典ノ法則トハ戦闘原則実施上必要ナル法則ナリ例ヘバ歩兵大隊展開ヲ行フニハ之ヲ第一線ト予備隊トニ区分スルガ如シ」

「戦闘原則トハ戦闘ヲ有利ニ導ク為最モ適切ト認メラルル兵力運用ノ方策ヲ謂フ」 
※【戦闘原則】の兵語の解の記載は上述、典範令用語ノ解の【原則】の解説の中略部分とほぼ同じ

これらの解説から、『操典』や『教範』はより上級の運用規範である『作戦要務令』に記述されている、兵力運用を実行するために必要な諸要素(教練等)の教本であるということがわかる。

このため、旧軍の戦術を十分に理解するためには、当たり前のことではあるが、各種操典から各種教範を経て戦闘綱要なり作戦要務令まで数多くの教本を読む羽目になる。

さらに言えば、典範令を読んでみれば直ぐにわかるが、これらは事細かに各種事項を記述しているわけではない。歩兵操典一つ取っても副読本は必須である。

そこで、まずは基礎となる歩兵操典を扱いたい。
明治42年の歩兵操典から昭和12年の歩兵操典草案までを触れる程度に扱った後、改正から終戦まで運用された昭和15年の歩兵操典を各条項ごとにある程度詳細に見ていこうと思う。

まずは明治42年の歩兵操典(第一次大戦以前の戦闘法について)⇒近代の歩兵戦法(一)