2016年5月5日木曜日

米軍のライフル中隊の編制 1940年

ライフル中隊(1940) "Rifle Company"
中隊本部"Company Headquarters"
指揮グループ "Command Group"
管理・補給グループ "Administration and Supply Group"
ライフル小隊 (×3) "Rifle Platoon"
指揮グループ "Command Group"
ライフル分隊 (×3) "Rifle Squad"
自動小銃分隊 "Automatic Rifle Squad"
火器小隊 "Weapons Platoon"
指揮グループ "Command Group"
軽機関銃分隊 "Light Machine-Gun Section"
60mm迫撃砲分隊 "60-mm Mortar Section"
(FM 7-5, Appendix II pars. 4, 5, 8)



中隊本部 "Company Headquarters"
• 指揮グループ "Command Group"
中隊長 (大尉) "Company Commander"
次級指揮官 (中尉) "Second-in-Command"
先任軍曹 "First Sergeant"
連絡掛軍曹 "Communications Sergeant"
ラッパ手 (兵) "Bugler"
伝令 (兵) "Orderly"
伝令 (兵×4) "Four Messengers"
管理・補給グループ "Administration and Supply Group"
補給掛軍曹 "Supply Sergeant"
炊事掛軍曹 "Mess Sergeant"
炊夫 (兵×2) "Cooks"
炊事助手 (兵×2) "Cooks' Helpers"
兵器工卒 (兵) "Armorer Artificer(s)"
中隊書記 (伍長) "Company Clerk"

(pars. 273, Appendix II. 8)


先任軍曹 "First Sergeant" は、指揮グループを管理する。(par. 273)
連絡掛軍曹 "Communications Sergeant" は、火光信号 "Light Signals" (おそらく回光通信や信号弾等?)を使用した迫撃砲分隊の統制や伝令の監督等を行う。(par. 273)
ラッパ手 "Buglers" は、特に観測手としての訓練を受けている。中隊長の統制下、連絡掛軍曹と共に任務を遂行する。(par. 273)
本文(par. 273)では、"Orderly" は "Buglers" としてまとめられているようで記述が無い。
伝令 "Four Messengers" は、1人は中隊の分進に際し大隊本部へ。1人は中隊長に同行する。
中隊本部は、中隊内や他の部隊との連絡を維持するため、各小隊からの追加の伝令によって増強される。(par. 273)
中隊の炊事・補給要員の職務は、大隊の補給将校の監督下、後方梯隊で行われる。(par. 273)
中隊書記の職務は、連隊副官の監督下、後方梯隊で行われる。(par. 273)


ライフル小隊 "Rifle Platoon"
指揮グループ "Command Group"
小隊長 "Platoon Leader"
(拳銃×1)
小隊軍曹 "Platoon Sergeant"
(小銃×1; 双眼鏡、方位磁針、鉄条鋏)
小隊嚮導 (軍曹 or 下士官) "Platoon Guide"
(拳銃×1; 信号投射器 "Signal Projector")
伝令 (×2) "Two Messengers"
(小銃×2; 鶴嘴 "Pick Mattock" or シャベル×1)
兵卒 (×5) "Five additional basic privates"
(小銃×5; 斧、鶴嘴 or シャベル×1)
ライフル分隊 (×3) "Three Rifle Squad"
分隊長 (軍曹) "Squad Leader"
(小銃×1; 双眼鏡、信号布板、方位磁針、鉄条鋏)
次級指揮官 (伍長) "Second-in-Command"
(小銃×1; 信号布板、方位磁針、斧)
兵卒 (×5〜10) "10 Privates and Private, first class"
(小銃×10; 鶴嘴×3、シャベル×7、信号布板×4)※
※兵10名の場合
自動小銃分隊 "Automatic Rifle Squad"
分隊長 (軍曹) "Squad Leader"
(小銃×1; 双眼鏡、鉄条鋏)
次級指揮官 (伍長) "Second-in-Command"
(小銃×1)
兵卒 (×6) "Six men"
(BAR×2、小銃×2、拳銃×2; 鶴嘴×2、シャベル×4、斧×1)

(Appendix II. 2,3,4)

小隊軍曹は次級指揮官。
小隊嚮導は先導役のようなもの。小隊の移動時は伝令と共に小隊長の近くにいる。
(基本的に小隊長は、小隊の移動時は先頭に。戦闘時は小隊の後ろに位置する。特に規定は無いと思うので、場合によるだろう)
指揮グループの5人の兵卒は、"may be provided as replacements." (Appendix II. 4) とあるので、必ずいるというわけではないようだ。
≪後で出てくる軽機関銃半小隊や60mm迫撃砲半小隊にいる2名の兵卒も同様。"Basic Privates" (おそらく二等兵のこと)という呼称で他の一般兵とは差別化されているので、予備兵のような扱いなのかもしれない≫
※"may be provided" が「設けることができる」なのか「提供される場合がある」なのかはっきりと分からないので正確な意味はちょっと怪しい
この5人の兵たちは、小隊長の判断で適宜状況に応じて配布される。(Appendix II. 4)

ライフル分隊は、 "The rifle squad consists of a leader, a second-in-command, and five to ten riflemen." (par. 31)とあるので、分隊長と次級指揮官を除いた兵員は5〜10人ということになるが、マニュアル上では兵員10人+分隊長、次級指揮官の12名で扱われていることがほとんど。
"FM 7-5" 上では、ライフル分隊の一般兵は「10名の兵卒」 "Privates and Private,first class" (二等兵と一等兵)として、なんの区別もなく一緒くたにされているが、"FM 22-5, figure 25" を見ると、2名(分隊の第2、第3の兵)は偵察兵 "Scout" ≪偵察兵として任命された兵や特別な訓練を受けた兵≫(FM 22-5, pars. 263,1941)、残りは "Rifleman" という区分がなされている。

自動小銃分隊もライフル分隊同様、"FM 7-5" 上では、一般兵はまとめて兵卒("Six Men" なのでライフル分隊より適当な扱いだが)として扱われているが、"FM 22-5, figure 25" を見ると、自動小銃分隊の構成は、分隊長、次級指揮官、自動小銃射手×2、射手助手×2、弾薬運搬手×2 となっている。

自動小銃分隊は攻撃時2つの班に分かれる。班はそれぞれ3名で構成され、内1名が班長 "Team Leader" となる。
防御時は、追加の自動小銃(1丁)が提供される場合がある(?)。その場合は各2名、3つの班となる。(FM 7-5. Appendix II. 3)

つまり、自動小銃分隊の編成をより詳細にすると、

自動小銃分隊 "Automatic Rifle Squad"
分隊長 "Squad Leader"
次級指揮官 "Second-in-Command"
自動小銃班 (×2) "Two Teams"
自動小銃手 "Automatic Rifleman"
(BAR×1)
射手助手 "Assistant Automatic Rifleman"
(拳銃×1)
弾薬運搬手 "Ammunition Carrier"
(小銃×1)

補足1:1940年以前の編制に自動小銃分隊は存在しない。
"Tentative Infantry Drill Regulations 1932"  (1932年歩兵教練規定試案:旧軍の歩兵操典草案といった感じ)によれば、この時期のライフル中隊は、

ライフル中隊 "Rifle Company"
中隊本部 "Company Headquarters"
ライフル小隊 (×3) "Rifle Platoon"
小隊本部 "Platoon Headquarters"
ライフル半小隊 (×2) "Rifle Section"
半小隊本部 "Section Headquarters"
ライフル分隊 (×3) "Rifle Squad"
分隊長 (伍長) "Squad Leader"
次級指揮官 (先任一等兵) "Second in Command"
偵察兵 (×2) "Scout"
自動小銃手 "Automatic Rifleman"
補欠自動小銃手 "Substitute Automatic Rifleman"
擲弾兵 "Rifle Grenadier"
兵卒 "Rifleman"
(TIDR 1932. pars. 83, 96, 108, 122)

という構成となっており、分隊が軽機関銃ではなく自動小銃を装備しているという事を除けば戦闘群編成そのものである。

しかしその後、1939年版 "Infantry Drill Regulations" (FM 22-5, 1939:旧軍の歩兵操典に近い)では、なぜかライフル分隊は小銃のみの "Rifle Squad" と自動小銃を装備した"Rifle Squad with Automatic Rifle" の2種類となっている。(FM 22-5, 1939. figure. 26)
整列する小隊の図(figure. 30)を見ると、3つの分隊は(おそらく)小銃のみを装備したライフル分隊である。
これに加えて、"Rifle Squad with Automatic Rifle" という呼称からは、「ライフル分隊が必ず自動小銃を装備しているとは限らない」といったような印象を受ける。

1932年の教練規定によればライフル分隊は自動小銃を装備していた。(1920年代はどうだったのか分からないが)
それが1939年頃からなぜか必ずしもそうではなくなり、1940年から自動小銃は完全にライフル分隊から分離し、自動小銃分隊が小隊内に編制されたが、1942年から(装備は若干異なるが)1939年以前のような分隊編制(小銃と自動小銃の両方を装備)に戻った。
という奇妙な流れをとっている。
1932年の試案の編制が文字通り試験的なもので(標題紙には "For Service Test Only" とある)、むしろ1939年の教練規定にある編制が1930年代の本来の編制なのかもしれない。

2016.5.15 追記: "Basic Field Manual; Volume II; Infantry Drill Regulations"(The united states infantry association, 1931)に記述されている編制は1932年のものと同様なので、30年代は上記の編制が正式だったのかも知れない。

2016.6.8 追記: "Organization and Equipment of the Infantry Rifle Squad: From Valley Forge to Road" によると、M1ライフル導入の影響(分隊の火力が大きくなった)により、1940年10月1日の編制表の改訂("FM 7-5" の発行も同日付)の際に自動小銃がライフル分隊から分離したとのこと。(小隊内に新しく自動小銃分隊が設けられた)

火器小隊 "Weapons Platoon"
指揮グループ "Command Group"
小隊長 "Platoon Leader"
小隊軍曹 "Platoon Sergeant"
(小銃×1; 双眼鏡)
輸送掛伍長 "Transport Corporal"
(小銃×1; シャベル)
伝令 (×2) "Two Messengers"
(小銃×2; シャベル)
運転手 (×2) "Two Chauffeurs"
(小銃×2; 1/2-ton Weapons Carrier×2)
軽機関銃半小隊 "Light Machine-Gun Section"
半小隊長 (軍曹) "Section Leader"
(拳銃×1; 鉄条鋏、双眼鏡、方位磁針)
伝令 "Messenger"
(小銃×1)
機関銃分隊 (×2) "Machine-Gun Squad"
半分隊長 (伍長) "Squad Leader"
(拳銃×1; 斧、双眼鏡、方位磁針)
機関銃手 "Gunner"
(空冷式.30cal軽機関銃×1、拳銃×1)
射手助手 "Assistant Gunner"
(拳銃×1; 弾薬250発)
弾薬運搬手 (×2) "2 Ammunition Bearers"
(拳銃×2; 弾薬500発×2)
兵卒 (×2) "Two Basic Privates"
(小銃×2)
60mm迫撃砲半小隊 "60-mm Mortar Section"
半小隊長 (軍曹) "Section Leader"
(拳銃×1; 鉄条鋏、双眼鏡、方位磁針)
伝令 "Messenger"
(小銃×1)
60mm迫撃砲分隊 (×3) "60-mm Squad"
分隊長砲手 (伍長) "Squad Leader and Gunner"
(拳銃×1、60mm迫撃砲×1; 斧、双眼鏡、方位磁針)
砲手助手 "Assistant Gunner"
(拳銃×1)
弾薬運搬手 (×3) "3 Ammunition Bearers"
(拳銃×3)
兵卒 (×2) "2 Basic Privates"
(小銃×2)
(FM 7-5. Appendix II. 5,6,7)

火器小隊には、2台の自動車(1/2-ton Weapons Carriers)がある(ライフル大隊の3個中隊に合計6輌配備。つまり、各中隊に2輌)。(Appendix II. 16)
この2輌の内、1輌は、
60mm迫撃砲×3、迫撃砲半小隊の装備。
60mm迫撃砲の弾薬180発。
防御用(自衛?)および対空射撃用自動小銃×1(おそらく車載)
もう1輌は、
軽機関銃×2、.30 cal 機関銃弾薬6000発
自衛兼対空射撃用の自動小銃×1
を運ぶ。(Appendix II. 5)

機関銃分隊が運搬車両から離れる時の携行弾数は、1銃につき1250発(弾薬箱5個)が標準。
射手助手が1箱(250発)、2人の弾薬運搬手がそれぞれ2箱(500発)ずつ弾薬を運ぶ。
中隊の輸送車両 "Weapons Carriers" は、追加の弾薬を各機関銃へ運ぶ。(Appendix II. 6)

60mm迫撃砲分隊の砲手助手と弾薬運搬手の4名は、拳銃の他に、2名が鶴嘴、他の2名はシャベルを携行する。(Appendix II. 7)
砲手助手と弾薬運搬手が弾薬を携行するようだが、マニュアル上にはいくつ持っていくのか等の記載は無い。
攻撃時に関しては、弾薬運搬手は弾薬チョッキ("Ammunition Bag M2" 腹側と背中側に弾薬を入れるポケットがあるチョッキ)に弾薬を入れて運ぶので、各自の携行弾薬は10個前後だと思う。(資料なし)


補足2:1939年付近はマニュアルに関して色々と面倒な時期。
米軍のマニュアルといえば "Field Manuals" だが、"FM" という名を冠したマニュアルが出てくるのは基本的に1939年から。("Field Manual" という名前を持つマニュアルは1939年以前にもあったようだが、いわゆるよく知られた "FM" として番号を(新しく)振られ始めるのは1939年から)
例えば "FM7-5" は1940年に発行されているが、それ以前の "FM 7-5" にあたるマニュアルは何かといえば、"TR" というマニュアルであったらしい。( "TR" というのは "Training Regulations" の略称であるが、"Technical Regulations" というマニュアルもあり、どちらも "TR" と略称されるので紛らわしい)
ちなみに "FM 7-5" は、後任(改訂)が無いちょっと不思議なマニュアルで、これの後任に近いと思われるマニュアルは、番号が変わった "FM 7-10" である。
"FM 7-5" は、記載されている編制もマニュアルの存在自体もちょっと独特なマニュアルとなっている。



参考文献

・U.S. War Department, 1940, FM 7-5 Organization and Tactics of Infantry The Rifle Battalion
・U.S. War Department, 1941, FM 22-5 Infantry Drill Regulations
・U.S. War Department, 1939, FM 22-5 Infantry Drill Regulations
・U.S. War Department, 1932, Tentative Infantry Drill Regulations
・U.S. War Department, 1940, FM 21-6 List of Publications for Training
・U.S. War Department, 1944, TM 30-541 Japanese Military Dictionary

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