2016年6月5日日曜日

米軍のライフル中隊の編制 1942〜45年

ライフル中隊 "Rifle Company"
中隊本部 "Company Headquarters"
指揮グループ "Command Group"
管理グループ "Administration Group"
火器小隊 "Weapons Platoon"
小隊本部 "Platoon Headquarters"
60mm迫撃砲半小隊 "60-mm Mortar Section"
軽機関銃半小隊 "Light Machine-Gun Section"
ライフル小隊 (×3) "Rifle Platoon"
小隊本部 "Platoon Headquarters"
ライフル分隊 (×3) "Rifle Squad"

米軍の中隊編制は1942年からWW2終結までこの形で一貫している。


ライフル中隊編制詳細(1944年基準)

中隊本部 "Company Headquarters"
指揮グループ "Command Group"
中隊長 (大尉) "Company Commander"
(Captain/M1 Carbine×1)
次級指揮官 (中尉) "Second-in-Command"
(First Lieutenant/M1 Carbine×1)
先任軍曹 "First Sergeant"
(First Sergeant/M1 Carbine×1)
連絡掛軍曹 (三等軍曹) "Communications Sergeant"
(Sergeant/M1 Rifle×1, M7 Grenade Launcher×1)
ラッパ手 "Bugler"
(M1 Carbine×1, M8 Grenade Launcher×1)
伝令 (×3) Messengers"
(M1 Carbine×3)
管理グループ "Administration Group"
補給掛軍曹 (二等軍曹) "Supply Sergeant"
(Staff Sergeant/M1 Carbine×1)
兵器工卒 (5級特技兵) "Armorer-Artificer"
(Technician 5th Class/M1 Rifle×1)
炊事掛軍曹 (二等軍曹) "Mess Sergeant"
(Staff Sergeant/M1 Carbin×1)
炊夫 (×4) "Cooks"
・炊夫 (4級特技兵) (×2) "Cooks"
(Technician 4th Class/M1 Rifle×2)
・炊夫 (5級特技兵) (×2) "Cooks"
(Technician 5th Class/M1 Rifle×2)
炊事助手 (×2) "Cooks' Helpers"
(M1 Rifle×2)
中隊書記 (伍長) "Company Clerk"
(Corporal/M1 Rifle×1)

1944年の "FM 7-10" では、1942年の"FM 7-10" に記載のあった "Orderly" (伝令)が無くなっている。
また、"Administration Group" の別の呼称として、"Administrative Group" という呼称がマニュアルに出現。
編制表(T/O&E 7-17, 26 Feb 1944)* によれば、中隊本部には予備の兵士(?) "Basic" が17名(M1 Rifle装備)、M3 SMG×6、BAR×6、2.36-inch M9 Rocket Launcher×5、Reel Equipment CE-11×2、Radio Sets SCR-536×6 がある。

*この編制表は1944年6月の変更分を含んでいる。


BARの装備数に関して...
"Order of battle of the United States Army, World War II: European Theater of Operations, divisions" (p.569)を見ると、1943年7月の装備定数表では歩兵師団に243丁だったものが、1945年1月の装備定数表では405丁と大幅に増えている。

各ライフル分隊が1丁ずつBARを装備すると、師団が持つBARの総数は243となる。
(歩兵師団には27個の中隊があり、各中隊は3つの小隊を持つ。各小隊には3つのライフル分隊があり、各分隊は1丁のBARを装備)≪3×3×27=243≫

1944年2月以降の中隊本部には6丁のBARがある。この中隊本部の6丁のBARと、各分隊が持つBARの数を合わせると師団が持つBARの総数は405となり、上記の1945年1月の装備定数表の数値と合致する。≪(3×3+6)×27=405≫

"Infantry rifle squad: size is not the only problem" には、
「第二次世界大戦を通して、アメリカの歩兵部隊はさらなるBARの火力に頼るようになった。事実、1944年(※Change 1, 30 June TO/E 7-15 1944)までに、陸軍は歩兵中隊がもつBARの100%の増加を許可した。」(p.4)とある。
これまでに見た編制表等によれば100%では無いような気がするが、とにかく増加はされている。

歩兵中隊のBAR装備数の変遷は以下。

1942年4月〜43年2月: 各歩兵中隊に11丁*
*(おそらく火器小隊の輸送車の車載分を含む)
1943年3月〜44年5月: 各歩兵中隊に9丁
1944年6月〜: 各歩兵中隊に15丁

1944年6月からは、歩兵中隊の(全3個小隊中)2個小隊は各分隊にBARを2丁配備することが可能ということになる。

中隊本部には M3 SMG が6丁あるが、中隊本部を含めて、中隊の兵員はほとんどが小銃かカービンを携帯しているので、状況によって持ち替えたりするような予備の火器なのだろう。

中隊書記 "Company Clerk"は、ライフル中隊唯一の伍長 "Corporal" だが、英語版Wikipediaの "Squad" の記事では、ライフル分隊の自動小銃班や小銃班のチームリーダーも非公式的に伍長だったといったことが書かれている。


火器小隊 "Weapons Platoon"
小隊本部 "Platoon Headquarters"
小隊長 (中尉) "Platoon Leader"
(First Lieutenant/M1 Carbine×1)
小隊軍曹 (一等軍曹) "Platoon Sergeant"
(Technical Sergeant/M1 Carbine×1)
一等/二等兵 (×4) "Several Privates or Privates First Class"
・運転手 (5級特技兵 ×2) "Drivers"
(1/4-ton 4×4 Truck&Trailer×2, M1 Rifle×2, M7 Grenade Launcher×2)
・伝令 (×2) "Messengers"
(M1 Carbine×2)
60mm迫撃砲半小隊 "60-mm Mortar Section"
半小隊本部 "Section Headquarters"
・半小隊長 (二等軍曹) "Section Leader"
(Staff Sergeant/M1 Rifle×1)
・伝令 "Messenger"
(M1 Carbine×1)
60mm迫撃砲分隊 (×3) "60-mm Mortar Squad"
・分隊長 (三等軍曹) "Squad Leader"
(Sergeant/M1 Rifle×1)
・砲手 "Gunner"
(60-mm Mortar M2×1, .45 cal Pistol×1)
・砲手助手 "Assistant Gunner"
(.45 cal Pistol×1)
・弾薬運搬手 (×2) "Ammunition Bearers"
(M1 Carbine×2)
軽機関銃半小隊 "Light Machine-Gun Section"
半小隊本部 "Section Headquarters"
・半小隊長 (二等軍曹) "Section Leader"
(Staff Sergeant/M1 Rifle×1, M7 Grenade Launcher×1)
・伝令"Messenger"
(M1 Carbine×1)
軽機関銃分隊 (×2) "Light Machine-Gun Squad"
・分隊長 (三等軍曹) "Squad Leader"
(Sergeant/M1 Rifle×1, M7 Grenade Launcher×1)
・軽機関銃手 "Gunner"
(.30 cal M1919×1, .45 cal Pistol×1)
・射手助手 "Assistant Gunner"
(.45 cal Pistol×1)
・弾薬運搬手 (×2) "Ammunition Bearers"
(M1 Carbine×2)

FM 7-10(1942)では、小隊本部に輸送掛伍長 "Transport Corporal" がいたが、1944年版ではこの伍長がいなくなった。
また、1944年版から火器小隊の輸送車両(1/4-ton 4×4 Truck)の運転手の呼称が、"Chauffeur" (元は仏語)から "Driver" に変わっている。

火器小隊の小隊本部には ".50 cal MG M2(×1)"があり、隊附輜重 "organic transport" に対空・対地射撃用として提供される。(FM 7-10, 1944, par. 3e)
隊附輜重というのは、火器小隊の小隊本部にある2輌の "1/4-ton Truck" のこと。
隊附輜重 "The organic transportation" は、2輌の "1/4-ton truck" と2輌の "1/4-ton trailer" から成り、火器小隊の武器と弾薬を運ぶ。(par. 6a)

1943年3月から(?)トラックの武装がBARから .50 cal HMG となったため、それまで中隊全体で11丁あったBARは1943年3月から9丁となっている。(前述の通り、その後15丁に)


ライフル小隊 "Rifle Platoon"
小隊本部 (指揮グループ) "Platoon Headquarters"
小隊長 (中/少尉) "Platoon Leader"
(1st Lieutenant or 2nd Lieutenant/M1 Carbine×1)
小隊軍曹 (一等軍曹) "Platoon Sergeant"
(Technical Sergeant/M1 Carbine×1)
小隊嚮導 (二等軍曹) "Platoon Guide"
(Staff Sergeant/M1 Rifle×1, M7 Grenade Launcher×1)
伝令 "Messengers"
(M1 Rifle×2)
ライフル分隊 (×3) "Rifle Squad"
分隊長 (二等軍曹) "Squad Leader"
(Staff Sergeant/M1 Rifle×1)
副分隊長 (三等軍曹) "Assistant Squad Leader"
(Sergeant/M1 Rifle×1, M7 Grenade Launcher×1)
自動小銃班 "Automatic Rifle Team"
・自動小銃手 "Automatic Rifleman"
(Browning Automatic Rifle×1)
・射手助手 "Assistant Automatic Rifleman"
(M1 Rifle×1)
・弾薬運搬手 "Ammunition Bearer"
(M1 Rifle×1)
小銃手 (×7) "Riflemen"
・偵察兵 (×2) "Scouts"
(M1 Rifle×2)
・小銃手 (×5) "Rifleman"
(M1 Rifle×5, M7 Grenade Launcher×2)

1942年の "FM 7-10" では、副分隊長は "assistant squad leader and antitank rifle grenadier" (par. 133)となっている。
「1丁のM1903小銃は、対戦車擲弾射撃用として各ライフル分隊に供給される。」(par. 2b)とあるので、副分隊長がライフル分隊唯一の擲弾兵ということになる。(一応、分隊の一般小銃手である11番の兵が対戦車擲弾兵の交替要員であったようなので、厳密にいえば唯一ではないが)

一方、1944年の "FM 7-10" では、"Antitank rifle grenade" (FM 7-10 1942, par. 2b5)から "Antitank" という語が無くなり、 単に "Rifle grenades" (FM 7-10 1944, par. 2f)となって、対戦車用兵器としての扱いが薄らいでいる。
装備する兵も大幅に増加しており、「連絡掛軍曹、小隊嚮導、軽機関銃半小隊の半小隊長、各軽機関銃分隊の分隊長、ライフル分隊の副分隊長、各ライフル分隊内の2人の兵、2人のトラック運転手」(par. 2f5a) が擲弾銃(M7 Launcher)を装備する。

"Bugler" はM1カービンを装備しているため、M7ではなく、M8擲弾銃を装備。(par. 2f5b)

ライフル分隊は手榴弾を装備していないように見えるが、手榴弾は戦闘の開始に先立って追加の弾薬と共に支給される(par. 148a)らしい。

分隊長が携行する銃はM1ライフルかM1カービンであったようだ。("NCOs in the American Army, 1925 – 1945", p.5)


参考文献

・U.S. War Department, 1942, FM 7-10 Rifle Company, Rifle Regiment
・U.S. War Department, 1944, FM 7-10 Rifle Company, Rifle Regiment
・U.S. War Department, 1941, FM 22-5 Infantry Drill Regulations, Changes No. 3 (1943)
・U.S. War Department, 1944, TM 30-541 Japanese Military Dictionary

0 件のコメント:

コメントを投稿