『第百七十八 駐軍間の警戒は主として前哨を以って之を行うものとす』(作戦要務令第1部)
前哨は、駐軍している軍隊の警戒に任ずるため、その前方に配置される部隊。
(軍隊が移動中の時は、前衛・側衛・後衛などを設けて警戒を行う)
前哨の規模と編成(作要第1部 第180、182、183)
前哨は通常、歩兵1個大隊以下。
駐軍するにあたり、必要に応じて警戒する地域をいくつかの前哨区に分け、各前哨区に前哨部隊を置く。
状況に応じて工兵や砲兵、通信部隊等を配属する。
駐軍するにあたり、必要に応じて警戒する地域をいくつかの前哨区に分け、各前哨区に前哨部隊を置く。
状況に応じて工兵や砲兵、通信部隊等を配属する。
前哨の任務(作要第1部 第189)
・敵の捜索の妨害
・奇襲を予知するために必要な範囲の捜索
・敵と近い場合、昼夜を問わず敵との接触を保持して敵情を明らかにする
前哨部隊の区分(作要第1部 第185)
前哨大隊は、若干の中隊を敵方に出して警戒に任ずる。この前哨大隊から出す中隊を前哨中隊と呼ぶ。
前哨中隊は、敵方に小哨、または歩哨を出す。
小哨は、敵方に歩哨を出す。歩哨は一地から動かずに監視を行うため、その監視が十分であるとは言えない。そのため、必要に応じて巡察を派遣し、監視警戒の密度を高める。
また、近距離の敵情・地形等を捜索する警戒斥候を派遣する。
前哨中隊から巡察・斥候を出すこともある。
前哨大隊
任務(作要第1部 第200)
敵襲に際して前哨中隊及び直接前哨大隊から派遣した小哨を増援する。状況により小哨等を収容する。
位置(作要第1部 第200)
通常、交通に便利な要点に位置する。
兵力(作要第1部 第182、183)
通常、歩兵1個大隊程度。所要に応じて騎兵、砲兵、工兵、通信部隊等を配属する。
警戒
前哨中隊、銃前哨等を出し、前哨全部の責を負う。
銃前哨は、前哨中隊や小哨等の位置で直接警戒を行う。3人一組程度で一名の歩哨を交代で立てる。
前哨中隊
任務(作要第1部 第205)
通常、主要な抵抗線を成形するもので、別命が無ければ極力敵襲を拒止する。
位置(作要第1部 第205)
敵襲の拒止に適した要点に配置する。
兵力(作要第1部 第205)
通常は歩兵1個中隊。機関銃、歩兵砲、砲兵、工兵等を配属することがある。
警戒(作要第1部 第207、211)
小哨、時として歩哨を配置し、時々必要な方面に斥候・巡察を派遣して警戒に当たる。
前哨中隊の位置に直接警戒のため銃前哨を配置する。必要に応じて対空監視哨を設ける。
前哨中隊の位置に直接警戒のため銃前哨を配置する。必要に応じて対空監視哨を設ける。
小哨
任務・位置(作要第1部 第213)
小哨は歩哨の支援を行い、後ろ盾となる。警戒上の要点に位置して捜索を行う。
敵襲に際しては、前哨中隊等が戦闘の準備を整える時間を稼ぐ。
兵力(作要第1部 第214)敵襲に際しては、前哨中隊等が戦闘の準備を整える時間を稼ぐ。
重要度の度合いに応じて1個小隊以下の兵力をこれに充てる。状況により必要であれば機関銃、対戦車火砲、携帯地雷、犬等を配属することがある。
警戒(作要第1部 第215)
敵に関する顧慮が大きくないような状況では、主に敵方に通じる道路や重要地点に歩哨を配置する。警戒の間隙には必要に応じて斥候・巡察を派遣して警戒を密にする。
敵に関する顧慮が大きい場合は、その度合に従い歩哨を互いに近く、相接するように配置する。
夜間や濃霧の際はより一層歩哨を相接するように配置する。
敵に関する顧慮が大きい場合は、その度合に従い歩哨を互いに近く、相接するように配置する。
夜間や濃霧の際はより一層歩哨を相接するように配置する。
歩哨
任務・位置(作要第1部 第224)
歩哨は通常、最前線の監視線を成形する。
区分(作要第1部 第225)
歩哨を分けて分哨と複哨とする。
分哨
位置(作要第1部 第225)
複哨
位置(作要第1部 第227)
位置(作要第1部 第225)
重要な地点、あるいは交代する際に不便な地点等に配置する。
人員(作要第1部 第226)
分哨は通常、哨長たる下士官、または上等兵以下4~7名。
状況により更に人員を増加する。また、軽機関銃が配備されることがある。
警戒法(作要第1部 第226)状況により更に人員を増加する。また、軽機関銃が配備されることがある。
通常、分哨の一部で監視を行い、他の兵員はその近くで勉めて遮蔽した状態で待機する。
兵は叉銃せず、全員が常に銃を持つ。
交代(作要第1部 第226)兵は叉銃せず、全員が常に銃を持つ。
極寒時等では、分哨であっても短時間内に交代を行う必要がある。
複哨
位置(作要第1部 第227)
分哨を置くまでもない地点、つまり、それほど重要ではない地点に配置する。
2人哨は小哨に近い位置か警戒が容易な地点に配置する。
小哨から複哨を出す距離は通常400m以内。
人員(作要第1部 第227)2人哨は小哨に近い位置か警戒が容易な地点に配置する。
小哨から複哨を出す距離は通常400m以内。
所要の兵員を歩哨掛の下士官、または上等兵の指揮の下2~4名ずつを交代で服務させる。
警戒法
2人、3人、4人共立哨して警戒する
交代
歩哨掛の指揮によって交代服務する。
歩哨の番号(作要第1部 第225)
歩哨はこれを出した部隊毎に右翼から順に一連番号を附け、第1分哨、第2複哨のように呼ぶ。
歩哨の服装と携行品(作要第1部 第228)
歩哨は小哨長の命令により背嚢を小哨の位置に残置する。
歩哨には手榴弾、必要であれば眼鏡、擲弾筒、対戦車地雷等を携行させる。その使用に関しては所要に応じて小哨長が指示を行う。
歩哨の位置(作要第1部 第229)歩哨には手榴弾、必要であれば眼鏡、擲弾筒、対戦車地雷等を携行させる。その使用に関しては所要に応じて小哨長が指示を行う。
・なるべく十分な展望を持ち、かつ敵から遮蔽できる位置を選ぶ。
・樹木、家屋、堆土等を利用し、必要に応じて眼鏡を使用する。また、所要の偽装を施して、かつ勉めて掩体、障害物等の工事を施す。
・高所の場合、音響を聴き、火煙を見るのに便利である。夜間は低地に位置していれば、空を背景に敵を見ることができる。昼夜で監視位置を変えることは往々にして必要なことであり、これは夜間の敵による奇襲の回避にも繋がる。
・ガスに対する顧慮が大きい場合は、特に風向き、地形等に応じてガス使用の兆候、ガスの流来等の発見に便利な位置を選ぶ。
分哨長、歩哨掛の歩哨設置(作要第1部 第230)・樹木、家屋、堆土等を利用し、必要に応じて眼鏡を使用する。また、所要の偽装を施して、かつ勉めて掩体、障害物等の工事を施す。
・高所の場合、音響を聴き、火煙を見るのに便利である。夜間は低地に位置していれば、空を背景に敵を見ることができる。昼夜で監視位置を変えることは往々にして必要なことであり、これは夜間の敵による奇襲の回避にも繋がる。
・ガスに対する顧慮が大きい場合は、特に風向き、地形等に応じてガス使用の兆候、ガスの流来等の発見に便利な位置を選ぶ。
歩哨掛、または分哨長は、任務を受けたら部下を率いて所要の警戒を行いつつ、速やかにその哨所に就き遮蔽してとりあえず監視に任じて小哨長が来るのを待つ。この際、小哨長誘導のために案内者を出すのも可。
歩哨掛、または分哨長は、特別守則を受けたらこれを兵に十分徹底させ、歩哨のために所要の設備を施して地形を覚えさせ、爾後複哨にあっては歩哨掛が交代の兵を率いて小哨の位置に帰還する。
歩哨掛、または分哨長は、特別守則を受けたらこれを兵に十分徹底させ、歩哨のために所要の設備を施して地形を覚えさせ、爾後複哨にあっては歩哨掛が交代の兵を率いて小哨の位置に帰還する。
歩哨一般守則
作戦要務令第1部
第二百三十一 歩哨線に在る歩哨は左の一般守則に基き行動すべきものとす
一、絶えず敵方を監察し併せて四囲を警戒し総ての徴候に深く注意す
敵に関し発見せば良く之を確かめて其の一名は報告し若し猶予し難きときは急射撃又は信号を為し且つ一名は急報す
少数の敵兵近接せば殺すか又は捕獲すべし
二、歩哨線の出入りを許すは我が軍の部隊、将校、斥候、巡察、伝令とし爾余の者に関しては小哨長の指示を受く 夜間近づく者あらば銃を構えて良く確かめ彼我判明せざるときは機先を制して「誰か」と呼ぶ三回呼ぶも答えなければ殺すか又は捕獲すべし
自動車は停止せしめて取調ぶべし
歩哨の命に反する者は殺すか又は捕獲すべし
三、出発する斥候よりは任務、経路、帰来の地点、時刻等の概要を聴き自己見聞の状況を告げ帰来する斥候よりは其の見聞せし事項を聞くべし
四、白旗を掲げ遠方より軍使たるを表す者と降参人とに対しては敵として取り扱わず歩哨線外に之を止め敵の方向に面せしめ降参人には武器を棄てしめ乗馬(車)者は下馬(車)せしめ速やかに報告すべし此の際無用の談話を避け特に欺かれざる様注意すべし
五、歩哨は喫煙すべからず命令なければ坐臥するを得ず銃は手より放すべからず昼間は立銃、提銃又は腕に銃を、夜間は提銃又は腕に銃を為す
第二百三十一 歩哨線に在る歩哨は左の一般守則に基き行動すべきものとす
一、絶えず敵方を監察し併せて四囲を警戒し総ての徴候に深く注意す
敵に関し発見せば良く之を確かめて其の一名は報告し若し猶予し難きときは急射撃又は信号を為し且つ一名は急報す
少数の敵兵近接せば殺すか又は捕獲すべし
二、歩哨線の出入りを許すは我が軍の部隊、将校、斥候、巡察、伝令とし爾余の者に関しては小哨長の指示を受く 夜間近づく者あらば銃を構えて良く確かめ彼我判明せざるときは機先を制して「誰か」と呼ぶ三回呼ぶも答えなければ殺すか又は捕獲すべし
自動車は停止せしめて取調ぶべし
歩哨の命に反する者は殺すか又は捕獲すべし
三、出発する斥候よりは任務、経路、帰来の地点、時刻等の概要を聴き自己見聞の状況を告げ帰来する斥候よりは其の見聞せし事項を聞くべし
四、白旗を掲げ遠方より軍使たるを表す者と降参人とに対しては敵として取り扱わず歩哨線外に之を止め敵の方向に面せしめ降参人には武器を棄てしめ乗馬(車)者は下馬(車)せしめ速やかに報告すべし此の際無用の談話を避け特に欺かれざる様注意すべし
五、歩哨は喫煙すべからず命令なければ坐臥するを得ず銃は手より放すべからず昼間は立銃、提銃又は腕に銃を、夜間は提銃又は腕に銃を為す
歩哨の特別守則
作戦要務令第1部
第二百三十二 小哨長は歩哨の特別守則を定め良く之を徹底せしむ其の内容は状況の推移に応じ適時補修すべきものとす
特別守則に於いて示すべき事項及び順序概ね左の如し
其の歩哨の番号
必要なる道路、村落、地物等の名称(要すれば写景図、要図等を利用す)
敵情
前方に在る我が部隊及び斥候の状況
特に監視すべき要地又は方向
敵の瓦斯使用及び之に対する警戒法等に関し注意すべき事項
隣歩哨の位置、番号及び之との連絡法
小哨、中隊等の位置及び之に通ずる経路
歩哨の監視法、姿勢、交代法要すれば瓦斯兵の行動、敵襲に際し取るべき処置
信号及び警報
其の他特に注意すべき事項
第二百三十二 小哨長は歩哨の特別守則を定め良く之を徹底せしむ其の内容は状況の推移に応じ適時補修すべきものとす
特別守則に於いて示すべき事項及び順序概ね左の如し
其の歩哨の番号
必要なる道路、村落、地物等の名称(要すれば写景図、要図等を利用す)
敵情
前方に在る我が部隊及び斥候の状況
特に監視すべき要地又は方向
敵の瓦斯使用及び之に対する警戒法等に関し注意すべき事項
隣歩哨の位置、番号及び之との連絡法
小哨、中隊等の位置及び之に通ずる経路
歩哨の監視法、姿勢、交代法要すれば瓦斯兵の行動、敵襲に際し取るべき処置
信号及び警報
其の他特に注意すべき事項
後退時の注意(作要第1部 第233)
歩哨は敵襲に際し、後退を命令されている場合でもすぐにその位置を放棄することなく、沈着して行動し、敵との接触を保ちつつ後退する。この際、自軍部隊の位置を敵に知られないこと、及び、自軍部隊の射撃の妨げとならないように注意する。
歩哨の交代(作要第1部 第234)
複哨の交代は歩哨掛立ち会いのもと行う。下番者は見聞した事件及び斥候として前方に出た者がいた場合は、その任務、経路、帰来の地点、時刻等を上番者に申し送りを行う。この際、監視は継続し中断しないようにすること。また、交代の往復時等、敵に暴露しないよう注意する。
分哨の監視兵の交代も概ね上に準じる。
分哨の監視兵の交代も概ね上に準じる。
参考文献
・『作戰要務令 第一、二、三部、附録其ノ一、二、三、四』(尚兵館,1942)
・軍事攻究會 編『實戰に基く歩哨、斥候、傳令、連絡兵勤務の研究』(一二三館, 1939)
・軍事攻究會 編『實戰に基く歩哨、斥候、傳令、連絡兵勤務の研究』(一二三館, 1939)
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