『第九十三 週番諸官ハ所属週番勤務者ヲ指揮シテ軍紀風紀ノ維持諸法則ノ実施如何ヲ警視シ以テ営内ノ取締ニ任シ且営内 当該部隊ニ属スル兵営附近ノ建造物及諸物件ヲ含ム ニ於ケル火災、盗難ノ予防及消防ノ責ニ任ス』
週番勤務についてのもう少し分かりやすい説明としては、
『軍隊は多人数が集団して起居してゐるので、中には過(あやま)って軍律を犯し、又は風儀を紊(みだ)す者が無いとも限らない。
此等の取締りは連隊長以下各隊長に責任があるが、それ等の上官は兵営の中に起居せず、日課が終れば自宅へ帰るから、其の退営不在中誰かに営内の軍紀・風紀の取締及び火災・盗難を予防する任務を命じて置かねばならぬ。そこで週番勤務といふものを定めて将校・下士官・上等兵等が一週間交代でこれに服することになってゐる。』
(帝國軍事教育社 編,『最新圖解 陸軍模範兵教典』,1941年)
もっと端的に、一文で説明したものが以下の文章である。
『週番勤務の目的は、隊内に於ける軍紀、風紀を維持し、諸法則の実施を正確ならしめ以て内務の全般的成績を向上せしむるにある。』
(武揚堂編纂部 編纂,『週番勤務提要』,1942年)
週番勤務の目的〈以下、文末の(第**)という表記は『軍隊内務書』の当該条項を示す〉
週番勤務は上記のように、兵営の軍紀・風紀の取締りや火災や盗難の予防等を目的としている。(第93)
週番勤務者一般
週番勤務者一般
週番勤務は連隊全体を取り締まる(指揮監督する)ものと、中隊を取り締まるものに分かれ、土曜日の正午から翌週の土曜日の正午までが勤務期間となる。場合によっては日直となることがある。勤務期間服務した後は、別の者と交代する。(第95)
勤務者は週番士官を除き、通常の勤務や演習が免除される。週番士官は中隊長が必要に応じて免除する。(第96)
営外に居住する者でも週番勤務中は営内に宿直する。(第97)
週番勤務者は、曹長以上であれば紅白の襷(週番懸章)を右肩から左脇下に下げる。下士官以下は週番腕章を左腕(上腕)につける。
週番勤務者の区分(第94)
勤務者は週番士官を除き、通常の勤務や演習が免除される。週番士官は中隊長が必要に応じて免除する。(第96)
営外に居住する者でも週番勤務中は営内に宿直する。(第97)
週番勤務者は、曹長以上であれば紅白の襷(週番懸章)を右肩から左脇下に下げる。下士官以下は週番腕章を左腕(上腕)につける。
週番勤務者の区分(第94)
連隊の週番勤務者
週番司令:(大尉〜中尉、1名)
週番司令:(大尉〜中尉、1名)
中隊が二つ以上ある部隊に置かれ、週番勤務者を指揮監督する。
週番司令室が定位(※基本的に常にいるべき場所)。(第94,99,100)
週番副官:(曹長、1名)
週番司令室が定位(※基本的に常にいるべき場所)。(第94,99,100)
週番副官:(曹長、1名)
中隊が二つ以上ある部隊に置かれ、週番司令の指揮を承け、週番司令を補佐する。週番司令の女房役。
週番副官室が定位。(第101,102)
中隊の週番勤務者
週番士官:(中尉〜准尉または曹長、1名)
週番副官室が定位。(第101,102)
中隊の週番勤務者
週番士官:(中尉〜准尉または曹長、1名)
中隊ごとに1名が服務する。
週番司令の指示の下、中隊の取締りに当たり、週番下士官以下を統轄する。
人馬の員数の確認・兵舎その他の巡察・週番下士官への巡察命令等々を行う。
将校室が定位。
ただし、少尉候補者以外の特務曹長は中隊事務室が定位。(第103,104)
週番下士官:(本部附下士官または軍曹〜伍長勤務上等兵、1名)
週番司令の指示の下、中隊の取締りに当たり、週番下士官以下を統轄する。
人馬の員数の確認・兵舎その他の巡察・週番下士官への巡察命令等々を行う。
将校室が定位。
ただし、少尉候補者以外の特務曹長は中隊事務室が定位。(第103,104)
週番下士官:(本部附下士官または軍曹〜伍長勤務上等兵、1名)
連隊・大隊本部服務と中隊服務の二つがある。
前者は各本部ごとに本部附下士官から1名。週番司令の指揮を受け、連隊・大隊長の指示により職務を執行する。
後者は中隊の軍曹、伍長、伍長勤務上等兵から1名。週番士官の指揮を受けて職務を執行する。
週番下士官が行う業務は非常に多く、週番勤務者の中では最も忙しい。
軍隊内務書に記述されている日常業務は17項目あり、他の週番勤務者の倍以上の項目数を誇る。
所属する本部の本部事務室または中隊事務室が定位。(第105,106,107)
(※週番勤務者の日常業務は週番下士官に限らず、列挙するには多すぎるため、ここでは週番上等兵のものを除き、全て省略している。各週番勤務者の説明の文末、軍隊内務書当該条項(第**のこと)のうち、下線がある条項が日常業務を記述している部分なので、詳細は軍隊内務書のその部分を見て欲しい。)
週番上等兵:(伍長勤務上等兵以外の上等兵、2名または1名)
前者は各本部ごとに本部附下士官から1名。週番司令の指揮を受け、連隊・大隊長の指示により職務を執行する。
後者は中隊の軍曹、伍長、伍長勤務上等兵から1名。週番士官の指揮を受けて職務を執行する。
週番下士官が行う業務は非常に多く、週番勤務者の中では最も忙しい。
軍隊内務書に記述されている日常業務は17項目あり、他の週番勤務者の倍以上の項目数を誇る。
所属する本部の本部事務室または中隊事務室が定位。(第105,106,107)
(※週番勤務者の日常業務は週番下士官に限らず、列挙するには多すぎるため、ここでは週番上等兵のものを除き、全て省略している。各週番勤務者の説明の文末、軍隊内務書当該条項(第**のこと)のうち、下線がある条項が日常業務を記述している部分なので、詳細は軍隊内務書のその部分を見て欲しい。)
週番上等兵:(伍長勤務上等兵以外の上等兵、2名または1名)
中隊では2名、機関銃隊・装甲自動車隊・乗馬部隊・固定無線隊・飛行中隊では1名が服務する。
週番下士官の指揮を受けて火災、盗難防止、巡察等の細務に従事する。
具体的には、
週番下士官の指揮を受けて火災、盗難防止、巡察等の細務に従事する。
具体的には、
1、兵舎の内外を巡察して、諸物品の保存、整頓、掃除が出来ているか確認。火災と盗難に注意し、夜寝る前の点呼である、日夕点呼(にっせきてんこ)の後は各室を巡察して、火鉢や暖炉などが消火されているか点検し、週番下士官の点検を受ける。
2、食事分配の時は、あらかじめ食事の数を週番下士官から聞いて置き、時間になったら当番兵を引率して炊事場で食事を受け取り、各内務班に分配する。食事が終わったら食器を洗わせ、食器を集めて炊事掛下士官(炊事場)へ返納する。
3、毎日当番兵を集めて内務班以外の区域(中隊長室、事務室、物置、廊下など)を掃除させ、掃除道具の保存を任ずる。
4、営倉に入った者に食事や寝具等を差し入れる際、検査を行い、風紀衛兵衛舎掛に引渡し、用済みとなったら衛舎掛からこれを受け取る。
5、入院または退院、休養室への入室あるいは退室する患者がいる場合、軍医や週番下士官の指示を受けて必要な処置、世話を行う。
週番上等兵は、中隊の事務室か居室が定位。(第108,109)
厩週番上等兵:(伍長勤務上等兵以外の上等兵、1名)
機関銃隊、乗馬部隊の各中隊ごとに1名が服務する。これらの隊以外でも馬がいる場合は厩(うまや)週番上等兵が置かれる。
週番下士官の指揮を受けて厩を取り締まる。厩内外の巡察や厩当番の人員の検査•勤務の監督、馬の状態の確認、馬糧の受領・分配等を行う。
厩週番上等兵は、厩が定位。(第110,111)
日直衛生下士官及び日直衛生兵
週番下士官の指揮を受けて厩を取り締まる。厩内外の巡察や厩当番の人員の検査•勤務の監督、馬の状態の確認、馬糧の受領・分配等を行う。
厩週番上等兵は、厩が定位。(第110,111)
日直衛生下士官及び日直衛生兵
軍隊内務書では衛生兵の古い呼称である看護長・看護兵となっている。
日直衛生下士官(日直衛生兵)は、独立中隊を除いた各部隊ごとに、衛生下士官、衛生上等兵から1名が服務し、医務室を定位とする。
また、連隊長は上記の他に1名の衛生上等兵を週番衛生兵として日直衛生下士官(日直衛生兵)の勤務の補助を行なわせることができる。
日直衛生下士官等の任務は、他の週番勤務者と似たようなものもあるが、医務室内の取締り及び火災予防、営内の衛生の警視、入院患者等の取り扱い、その他庶務となる。(第112,113)
不寝番
日直衛生下士官(日直衛生兵)は、独立中隊を除いた各部隊ごとに、衛生下士官、衛生上等兵から1名が服務し、医務室を定位とする。
また、連隊長は上記の他に1名の衛生上等兵を週番衛生兵として日直衛生下士官(日直衛生兵)の勤務の補助を行なわせることができる。
日直衛生下士官等の任務は、他の週番勤務者と似たようなものもあるが、医務室内の取締り及び火災予防、営内の衛生の警視、入院患者等の取り扱い、その他庶務となる。(第112,113)
不寝番
不寝番(ふしんばん)は、日夕点呼後から翌朝の起床時刻まで、他の兵が寝ている中、寝ずの番を行う。不寝番は中隊ごとに基本的に1名が服務する。
週番下士官の指揮を受け、火災・盗難防止のための各所巡察点検や兵室を見廻り、暑い日は窓を開けたり、毛布を蹴飛ばして腹を出して寝ている兵がいれば毛布を掛けてやる。といったことを行う。(第114)
厩当番
週番下士官の指揮を受け、火災・盗難防止のための各所巡察点検や兵室を見廻り、暑い日は窓を開けたり、毛布を蹴飛ばして腹を出して寝ている兵がいれば毛布を掛けてやる。といったことを行う。(第114)
厩当番
機関銃隊及び乗馬部隊の各中隊ごとに設けられ、厩週番上等兵の指揮を受けて、馬の状態の観察・厩の衛生保全・給飼と水与の準備・火災及び盗難防止の監視等を行う。交代があるようだが、夜間服務もある。(第115)
参考文献
・『軍隊内務書』 武揚堂,1934
・帝國軍事教育社 編 『最新圖解 陸軍模範兵教典』 帝國軍事教育社,1941
・川口喜一 『週番勤務の参考 全』 兵書出版社,1942
・武揚堂編纂部 『週番勤務提要』 武揚堂,1942
参考文献
・『軍隊内務書』 武揚堂,1934
・帝國軍事教育社 編 『最新圖解 陸軍模範兵教典』 帝國軍事教育社,1941
・川口喜一 『週番勤務の参考 全』 兵書出版社,1942
・武揚堂編纂部 『週番勤務提要』 武揚堂,1942
0 件のコメント:
コメントを投稿