昭和15年(1940年)、昭和13年の作戦要務令の制定及び編成装備の改正、日中戦争の経験などを反映する目的をもって輜重兵操典が改正される。 このとき、それ以前の輜重兵操典に記述されていた部隊が消え去った。それが「自衞隊」である。(新字体なら”自衛隊”である)
輜重兵操典中の記述
改正に伴って消えたと言っても、操典中にその「自衞隊」について書かれた部分は元々それほど多くはない。具体的にその記述されているところを挙げれば以下の通り。
第三篇 輓馬及駄馬教練
第二章 中隊教練 第二節 小隊及中隊 第五款 自衛隊ノ集合
第四章 行李、輜重ノ行動 第四節 自衞
※輓馬:荷物を積んだ輜重車などを曳く馬のこと
駄馬:荷物を背中に載せて運ぶ馬のこと
第二章 中隊教練 第二節 小隊及中隊 第五款 自衛隊ノ集合
第四章 行李、輜重ノ行動 第四節 自衞
※輓馬:荷物を積んだ輜重車などを曳く馬のこと
駄馬:荷物を背中に載せて運ぶ馬のこと
見落としがなければ以上の部分に記述されているもので全部である。
それでは実際に輜重兵操典の記述を見てみよう。
第四章 行李、輜重ノ行動 第四節 自衞
第三百八十 危險ナル地方ヲ通過スルニ方リテハ豫メ自衞隊ヲ編成スルヲ要ス
自衞隊ハ將校ヲシテ指揮セシムルヲ可トス時トシテ大行李、輜重ノ指揮官自ラ之ヲ指揮スルヲ要スルコトアリ而シテ其兵力ハ當時ノ狀(状)況ニ依ルモ之ヲ編成シタル爲大行李、輜重ノ行動ニ支障ヲ生セシメサルヲ要ス
自衞隊ハ人員ノ多少ニ應シ之ヲ一若ハ數箇ノ小隊ニ編成シ爲シ得レハ之ニ所要ノ乗馬兵ヲ配屬シ又要スレハ衞生部員ヲ附ス而シテ二箇以上ノ小隊ヲ 同一方面ニ使用スルトキハ之ヲ統一スルコト必要ナリ
※大行李:人馬の食糧その他を積載した輜重兵の車両部隊
輜重:弾薬や糧食等の軍需品の総称。これを輸送する部隊のことも指す
第三百八十 危險ナル地方ヲ通過スルニ方リテハ豫メ自衞隊ヲ編成スルヲ要ス
自衞隊ハ將校ヲシテ指揮セシムルヲ可トス時トシテ大行李、輜重ノ指揮官自ラ之ヲ指揮スルヲ要スルコトアリ而シテ其兵力ハ當時ノ狀(状)況ニ依ルモ之ヲ編成シタル爲大行李、輜重ノ行動ニ支障ヲ生セシメサルヲ要ス
自衞隊ハ人員ノ多少ニ應シ之ヲ一若ハ數箇ノ小隊ニ編成シ爲シ得レハ之ニ所要ノ乗馬兵ヲ配屬シ又要スレハ衞生部員ヲ附ス而シテ二箇以上ノ小隊ヲ 同一方面ニ使用スルトキハ之ヲ統一スルコト必要ナリ
※大行李:人馬の食糧その他を積載した輜重兵の車両部隊
輜重:弾薬や糧食等の軍需品の総称。これを輸送する部隊のことも指す
輜重兵操典には以上の様に記述されている。
運用法などはこれ以降の部分に記述されているが、少しわかりにくいと思われるので、
『最新図解 陸軍模範兵教典』という書籍中の自衞隊について解説している部分を引用する。
『大行李や輜重は、第一線部隊よりずつと後方を前進し、且抵抗力が弱いから敵の騎兵、義勇兵、敗殘兵、飛行機等に襲はれ易いから、自衞隊を編成して中隊や大行李の先頭か、中央か、後尾に位置させ、時として斥候を派遣して警戒しながら前進する。此の自衞隊は分隊長、班長、豫備員で編成するのである。』(帝國軍人教育會,1939,p.840)
右は行軍時における自衞隊の配置の例である。
自衞隊の主体は豫備兵だが、必要に応じて馭兵も加える事がある。通常、豫備兵は銃を携行しており、場合によっては手榴弾が支給されることもある。
特別なことがなければ、銃(おそらく三八式騎銃)と(支給された場合)手榴弾が自衞隊の基本装備である。
※予備兵: 補助兵、古くは豫備卒とも。銃を携行しており、他の輜重兵のように馬は曳かず、車両の後方で積み荷の監視等を行う。
この輜重部隊の自衛力であった自衞隊は輜重兵操典の改正とともに操典から姿を消す。戦闘に関する教練は歩兵と似たような内容となった。軽機関銃の運用の追加、小隊止まりだった徒歩教練は中隊教練まで行うこととなり、輓(駄)馬/自動車中隊には徒歩小隊一箇が編成され、この小隊が自衞隊に替わって戦闘を行う形となった。
以後、「自衞隊」という単語は操典改正以後、その名前を見かけることも稀となる。
参考文献
・田尻隼人 翻刻発行兼印刷 『輜重兵操典』(武揚社出版部,1935)
・軍用図書出版社編集部 編集 『縮刷野戦輜重兵必携』(軍用図書出版社,1941)
・陸軍省徴募課 編纂 『野戦輜重兵小隊長必携』(帝国在郷軍人会本部,1933)
・帝国軍人教育会 編 『最新図解 陸軍模範兵教典』(帝國軍人教育會,1939)
・軍用図書出版社編集部 編集 『縮刷野戦輜重兵必携』(軍用図書出版社,1941)
・陸軍省徴募課 編纂 『野戦輜重兵小隊長必携』(帝国在郷軍人会本部,1933)
・帝国軍人教育会 編 『最新図解 陸軍模範兵教典』(帝國軍人教育會,1939)
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