2014年12月3日水曜日

戦略・戦術・戦法その他 用語の解

戦略、戦術、戦法、それぞれはもちろん違う意味を持っているが当時の認識はどうだったのか。
現在の語句が指す意味と違うかも知れない。そこで一参考として『典範令用語ノ解』からいくつか用語及びその解説をここに記載する。

【戦略】

用兵法即ち戦争の目的を達するが為に大兵を運用する方策方は木版をいい、策は竹簡(竹のふだ)をいう。
方策は記録、文書。転じて、はかりごと。てだて(手段)
であって、多くは画策(はかりごとを立つること)に属するものである。


【戦術】

交戦法の称で、戦闘の実行に属し軍隊を戦闘場裏(戦場内)に操縦する方策を言う。
故に戦場に軍隊を導くまでの一般画策即ち大兵を作戦地戦地の一部分で彼我両軍の作戦する地域をいう。にまで運動行軍・駐軍・戦闘に於いて、隊形を変換したり、
又この一姿勢から他の姿勢に移りかわるため、
軍隊を進退集散する動作をいう。
せしめるのは戦術の範囲外であって、
これは戦略の部に属するのである。しかし日々の行軍軍隊が某目的地に到達する為に戦闘地域外に於いて自力を以って行う行動をいう。宿営軍隊が夜を過ごす為、休宿するをいう。は戦術の部に属する。
従って戦略、戦術のニ者は其の範囲が互いに相交錯して其の分界明確ならざる場合がある。要するに両者相まって以って用兵の妙を得るものである。

【戦法】

たたかいの方法。戦闘のしかた。例えば敵は退避作戦を得意とするとか、包囲、突破、正面攻撃の何れかを常に試みるとか、ゲリラ戦に長ずるとか等をいうのである。

【作戦】

通常戦略単位以上の兵団が某期間に亙って行う対敵行動の総称であって兵団の集中、捜索、行軍、駐軍、戦闘及び此等に必要な交通及び補給等を含むのである。
而して国軍の主目的の遂行に充てられる作戦を主作戦、副目的に充てられる他の作戦を支作戦と言う。例えば日露戦役に於いては主作戦を満洲に、支作戦を樺太及び北韓に行うたが如きである。



【戦争】

国際上の紛擾を決するために行う威力動作であって、その国是を貫徹し若しくは保持する為の最後手段である。そうして、政略・戦略 及び戦術上の諸般の動作をいう。
換言すれば、一国と他国との紛争の裁決を干戈かん-か
武力のこと。
に訴えるため、両者互いに武力を以って勝敗を決せんとする諸動作の総称であっ て、近代戦の特質は単に陸海両戦及び空中戦の武力戦に終始するものでなく経済、外交、思想等各方面に亙り広汎複雑である。

【事変】

常ならぬ出来事。かわりごと。

【会戦】

会戦とは敵を圧倒殲滅する目的を以って通常軍以上の大兵団を以って行う戦闘及び之が前後に於ける行動を総称す。

【戦闘】

たたかうこと。たたかい。現に彼我両軍が一地で相対向して兵器を交えて戦争の目的を達せんとする動作をいう。
従って会戦と戦闘とは一般に交戦規模の大小に依り自ら区分せられるを通例とす。



【戦略単位】

戦略単位とは統御、経理、衛生の各機関を備え数日間独立して作戦し得る諸兵連合の建制部隊であって日々其の長の直接命令に依り進退し得べき最大単位をいう。
我が国の師団等は之れである。

【戦術単位】

戦術単位とは一指揮官の号令又は命令の下に直接戦闘を指揮し得べき最大単位であって兵種固有の戦術上の術策を施すことの出来る最小単位をいう。
歩兵大隊、砲兵大隊等之れである。

【戦闘単位】

戦闘単位とは志気の結合最も鞏固であって、核心とする其の長の号令又は命令により戦闘を実行し得る単位をいう。
歩兵、騎兵、砲兵の中隊等之れである。




【運動戦】

陣地戦数帯に設備せられた堅固なる陣地の攻防を言う。に対する兵語であって、通常兵団の運動中に発生し且つ永く一地に固着することなき戦闘、即ち遭遇戦、追撃及び退却戦闘並びに防御陣地の攻防等を言うのである。
但し大軍の運動戦では其の一部分に於いて陣地戦を交えることもある。

【局地戦】

村落、森林、高地、隘路、河川等に依り特性を現す所の戦闘をいう。

【持久戦】

決戦攻防何れの形式たるを問わず其の戦場に於いて勝敗を定める、たたかい。を避け時間の余裕を得ようとする場合とか、他に目的例えば、敵を牽制抑留する場合などに行うものであって、通常優勢な敵に対して独力で行うものである。
従って、この戦闘は、多くは守勢に属するが攻勢を取らねば其の目的を達成しがたい場合の少なくないことに着意することが必要である。




田部 聖・奥田 昇 共著 『典範令用語ノ解[作戦要務令ノ部]』(兵書出版社、1942年)
 ※旧字体は新字体に直した。また、送り仮名の追加等一部に変更あり

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