2015年3月2日月曜日

戦闘各個教練(四) 擲弾筒止板位置の選定・地物の利用

戦闘各個教練

擲弾筒

第五十九 筒を据うるに方(あた)りては止板の位置良好にして且つ射弾の観測に支障なき限り勉めて遮蔽せる位置を選ぶ
止板の位置は左右高低なく安定良き所に選ぶ
著しく堅硬なる土地に於いては止板の下に適宜の物料を敷く
地物の後ろに在りては之に射弾の触れざる如く適宜離れて止板の位置を定む又傾斜地に在りては特に射角を誤らざること緊要なり
胸墻(きょうしょう)に拠る射撃は身体の前部を内斜面に接し伏射に準じ行う

歩兵操典中の擲弾筒に関する戦闘各個教練の条項はこれだけ。擲弾筒は運用する際の注意事項等が色々と細かくて多い。

止板位置の選定
止板位置選定上、注意すべき事項
1、左右に高低差がないこと
2、安定良好であること
3、発射の際に滑走しないこと
4、地質が等斉で適度な硬土(糾草地、岩石が混じっていない尋常土等)であること
 
地質等斉安定良好な場合
地質等斉で適度な硬度をもつ地面(硬土)であれば、撃発時の動搖は少なく、弾道性能は良好。同一位置で数発の射撃が可能。
地質等斉で軟土の場合、弾道性能は硬土と比べて良いが、撃発時の動揺は硬土よりも大きく、射撃の度に射撃位置の移動が必要となる。


地質等斉で適度に堅硬だが平坦でない場合
撃発時に筒が動揺するため、方向が狂う。
左図の例では、射弾は左の方へ飛んで行く。


平坦だが地質が等斉ではない場合
撃発時に影響はないが、弾丸が運動を開始して筒口を離れるまでの筒の後座する力が止板の左右で不斉に作用して、筒が軟らかい地面の方へ傾く。
左図の例では、射弾は右の方へ飛んで行く。

地皺を利用する場合
地皺を利用する際は、止板の位置を凹地の敵方斜面に選定する。
止板の位置を凹地に選定するのは、止板の位置が高いと伏射時に筒の高さによって照準が妨げられることと、筒の角度が大きくなりやすいため。
また、擲弾筒は後座衝力が大きいため、斜面を支点として利用するという目的もある。




堅硬な地面の場合
堅硬な地面(岩石地、凍結地、氷上等)で射撃する際は、兵器の損傷を防ぐため止板の下に緩衝物を設ける。
緩衝物は高粱、藁、莚(むしろ)、土嚢、毛布などを固く結束して、弾力性が無いようにする。弾力性があると射撃時に止板を弾発し、ひどい場合は筒の保持が困難となる。




柔軟な地面の場合
柔軟地(砂地、畑地等)で射撃する際は、地面の上層の粗雑な部分を射線に直角に掘り、比較的固い部分に止板を置く。この時、麻布や土嚢などを止板の下に置くと良い。
沼地のような極度に軟らかい場所では左図のようなことを行っても効果はない。





遮蔽物の利用
遮蔽物を利用する場合、その遮蔽物の高さよりも後退した場所に筒を据える。
射角は45度で行うため、遮蔽高以下のところで射撃すると弾は遮蔽物に当たって爆発することになる。
また、樹木等を遮蔽物として利用する場合、葉や枝が弾頭に当たるだけで瞬発信管は反応するので、一枚の葉や一本の枝でさえもその弾道に触れないような射撃位置を選定する必要がある。

小起伏等を遮蔽に利用する場合
概ね左の図の通り。
※図では「遮蔽の度」となっているが、他の文献では「遮蔽の程度」となっているので、おそらくこの図では「程」が抜けている。

補助照準点は、白い小石や花などその場にある目立つものを活用する。必要であれば小杭などを設置して使用する。



胸墻に依る射撃

説明は
『擲弾筒教育ノ参考 』,1937
『戦闘各個教練ノ参考 {小銃 軽機関銃 擲弾筒} 第壹巻』,1938
『歩兵教練ノ参考(各個教練) 第一巻』,1942
歩兵隊第一期 初年兵教育』,1943
をもとに作成。

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