通則
第八十四 中隊は戦闘単位にして中隊長を核心とせる志気結合の基礎なり故に中隊は如何なる場合に於いても中隊長の意図に従い衆心一地良く攻撃精神を発揚し歩兵戦闘の惨烈なる状態に耐え克ち其の精神的団結を保ちて戦闘を実行するを要す此の趣旨に基き良く訓練せられたる中隊は豫め修得せざることと雖も制式及び法則の活用に依り能く目的を達し得るものなり
第八十五 中隊長は准尉を長とする若干の人員を以って指揮班を編成し且つ指揮班及び一般分隊中の若干名に狙撃手を命ず
中隊指揮班任務分担一例 | ||
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人員 | 任務 | 材料 |
准尉 | 班長として中隊全般の連絡、特に大隊長との連絡 | - |
曹長 | 大隊長に到り、伝令1乃至3を以って中隊間の連絡に任ず | 自転車・夜光羅針 |
給養掛 | 給養兼対空勤務 | 測遠器 |
武器掛 兼瓦斯掛 | 弾薬兼瓦斯に関する勤務に任じ、併せて敵情監視及び直接警戒に任ず | 角型眼鏡・検知器 |
連絡掛 | 指揮副長として、主として第一線小隊、並びに左右及び後方部隊との連絡に任ず | 手旗・夜光羅針 |
連絡兵 | 主として視号通信 | 字号布板・仮名字棒手旗 |
対空兵 | 対空勤務並びに連絡 | 字号布板・手旗 |
喇叭手 | 各小隊に1配属連絡 | 隠顕灯 |
瓦斯勤務兵 | 瓦斯勤務並びに連絡 | 風旗・防毒器 検知器 |
※佐々木一雄著『幹部候補生 実兵指揮の参考』p.415より |
第一章 密集
第一節 隊形
第八十六 分隊の隊形及び分隊長以下の定位第一図の如し
縦(横)隊に在りて横(前後)に排列したる四(二)人を伍と謂い後尾(左翼)の伍に欠員あるときは左より(後列を)欠く之を欠伍と謂う
各兵の間隔は左手を腰に当てて肘を側方に張りたるとき軽く左隣兵の右臂に触るるを度とし距離は縦隊に在りては前の兵の踵より後ろの兵の踵迄約一米三〇、横隊に在りては前列兵の背嚢(背嚢を負わざるときは背)より後列兵の胸迄約八十五糎とし正しく重なる
縦(横)隊に於ける各伍は第一(前)列に於いて前(右)より番号を附す
縦隊に在りては時宜に依り兵を三(二)(一)列に排列す
⇒分隊の隊形
縦隊で横に並ぶ4人、横隊で前後に並ぶ2人を「伍」と呼ぶ。縦隊の後尾(列の後ろ)、または、横隊の左翼の伍に欠員がある場合は、縦隊では左、横隊では後列がなくなる。これを「欠伍」という。
各兵の左右の間隔は、左手を腰にあてて肘を横に張って、左隣の兵の右腕に軽く触れる程度であれば良い。
前後の間隔(距離と呼ぶ)は、縦隊の場合、前の兵の踵から後ろの兵の踵までが約1m30cmとなれば良い。
横隊の場合は、前列兵の背嚢(背嚢を背負っていない場合は背中)から後列兵の胸まで約85cmとし、前の兵と正しく重なる。
縦隊の各伍は、第一列の前から番号をつける。
横隊の場合は、前列の右から番号をつける。
縦隊は状況により、3列~1列とする。
※分隊の整列(大正期) |
前後の間隔(距離と呼ぶ)は、縦隊の場合、前の兵の踵から後ろの兵の踵までが約1m30cmとなれば良い。
横隊の場合は、前列兵の背嚢(背嚢を背負っていない場合は背中)から後列兵の胸まで約85cmとし、前の兵と正しく重なる。
縦隊の各伍は、第一列の前から番号をつける。
横隊の場合は、前列の右から番号をつける。
縦隊は状況により、3列~1列とする。
第八十七 小隊の縦隊は通常分隊の縦隊を番号の順序に重畳(ちょうじょう)す分隊に欠伍あるときは後ろの分隊は逐次之を補填する如く排列す
先頭分隊長は定位に、小隊長は其の右側に、後尾分隊長は第一列の後ろに、他の分隊長は分隊の第一伍の、連絡掛下士官(伝令)は先頭分隊の第一(二)伍の右側に位置す後尾分隊長と前の兵との距離は兵相互間に同じ
⇒小隊の縦隊と小隊長・分隊長の位置
小隊の縦隊は通常、分隊の縦隊を番号順に重ねる。分隊に欠伍がある場合は、後ろの分隊で埋めていく。
先頭分隊長は分隊の縦隊の時の位置と同じ。小隊長は先頭分隊長の右側に位置し、後尾分隊長は小隊の最後尾、第一列の後ろにつき、他の分隊長は自己の分隊の第1伍の右側へ。
また、小隊には連絡掛下士官や伝令が設けられる。連絡掛下士官は先頭分隊の第1伍の右側、伝令は第2伍の右側にそれぞれ位置する。
先頭分隊長は分隊の縦隊の時の位置と同じ。小隊長は先頭分隊長の右側に位置し、後尾分隊長は小隊の最後尾、第一列の後ろにつき、他の分隊長は自己の分隊の第1伍の右側へ。
また、小隊には連絡掛下士官や伝令が設けられる。連絡掛下士官は先頭分隊の第1伍の右側、伝令は第2伍の右側にそれぞれ位置する。
第八十八 小隊の横隊は分隊の横隊を番号の順序に横に排列す分隊に欠伍あるときは左隣の分隊は逐次之を補填する如く排列す
小隊長は小隊の前列の中央前二歩に、連絡掛下士官(伝令)は最右翼分隊の第一(三)伍の後列兵の後ろに位置す小隊の両翼に各々翼の分隊長を置く他の分隊長は分隊の概ね中央の奇数伍に重なり後列兵の後ろに位置す後列兵の後ろに位置する者を押伍(おうご)と謂い後列兵との距離は前後列間に同じ
時宜に依り小隊の縦隊を側面に向け横隊を作る
⇒小隊の横隊と小隊長・分隊長の位置
小隊の横隊は、分隊の横隊を番号順に並べる。分隊に欠伍がある場合は、左隣の分隊で埋めていく。
小隊長は小隊の中央、前列の2歩前に位置し、連絡掛下士官は最右翼分隊の第1伍の後列兵の後ろ、伝令は第3伍の後列兵の後ろに位置する。
小隊の左右それぞれ、前列の兵の隣に分隊長を置き、その他の分隊長は、中央の奇数伍の後列の兵の後ろに位置する。後列の兵の後ろに位置する分隊長を押伍と言い、後列の兵との距離は前後列の距離と同じ。
状況により、小隊の縦隊を側面に向けて横隊を作る。
横隊の場合、伝令は最右翼分隊の第3伍の後列の兵の後ろに付くことになっている。縦隊の時は第2伍の隣に位置することになっており、横隊と縦隊で伝令の位置する場所が違う。
これは、縦隊から横隊に変換する際は下図のような移動を行うのだが、伝令の位置が第3伍であれば、その際に伝令が移動せずに規定の位置につけるようになるためである。
小隊長は小隊の中央、前列の2歩前に位置し、連絡掛下士官は最右翼分隊の第1伍の後列兵の後ろ、伝令は第3伍の後列兵の後ろに位置する。
小隊の左右それぞれ、前列の兵の隣に分隊長を置き、その他の分隊長は、中央の奇数伍の後列の兵の後ろに位置する。後列の兵の後ろに位置する分隊長を押伍と言い、後列の兵との距離は前後列の距離と同じ。
状況により、小隊の縦隊を側面に向けて横隊を作る。
横隊の場合、伝令は最右翼分隊の第3伍の後列の兵の後ろに付くことになっている。縦隊の時は第2伍の隣に位置することになっており、横隊と縦隊で伝令の位置する場所が違う。
これは、縦隊から横隊に変換する際は下図のような移動を行うのだが、伝令の位置が第3伍であれば、その際に伝令が移動せずに規定の位置につけるようになるためである。
第八十九 中隊の隊形は併立縦隊、縦隊及び中隊縦隊とす併立縦隊は集合及び運動に、縦隊は主として運動に、中隊縦隊は集合及び短距離の運動に用う
第九十 併立縦隊第二図の如し
第九十一 縦隊は通常指揮班、小隊、重火器及び弾薬小隊の縦隊を其の順序に距離二歩 馬の後端より直後の徒歩者の踵迄 に重畳す中隊長は中隊の先頭二歩に位置す
第九十二 中隊縦隊は通常一般小隊及び指揮班の横隊を其の順序に重畳するの外併立縦隊に準ず
⇒『初級幹部研究用 歩兵操典詳説 第1巻』や操典の記述等を基にすると、中隊縦隊の基本的な隊形はおそらく下図のようなものだと思われる。(『歩兵操典詳説』では、重火器・弾薬小隊の小隊長が記載されておらず、指揮班の両翼に曹長が位置する図が載っている。操典では「併立縦隊に準ず」と記述されているので、下図では重火器小隊等に小隊長を追加したが、間違っている可能性はあるので注意)
第九十一の縦隊に関しては、隊形の詳細な図を載せているような書籍等が見当たらなかったので細かいことは分からないが、この隊形は単純に縦隊の指揮班・小隊・重火器小隊・弾薬小隊を縦に並べたものなので、ことさら触れるようなことは少ない。
一つだけ挙げるなら、縦隊は歩兵操典草案の頃は側面縦隊と呼ばれており、この頃は中隊長の位置も中隊の中央ではなく、小隊長の隣だった。
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