2015年3月25日水曜日

中隊教練(二) 密集の動作・叉銃

中隊教練

第二節 密集の動作

第九十三 四列縦隊に在る小隊左向を為せば第一、第三列に在る兵は第二、第四列に在る前の兵の左に出て二列となり各自右方に整頓す
横隊に在る小隊右向を為せば前項と概ね反対の方法に依り四列となり各自旧正面の方に整頓す
小隊長及び分隊長は駈歩にて所定の位置に就く

⇒中隊教練(一)で紹介した、縦隊を横隊に変換する動作が実際に記述された部分。
4列縦隊の小隊が、「左向け左」を行った場合、第1列と第3列の兵はそれぞれ第2列、第4列の兵の左隣に出て2列になって各自右の方に整頓する。 
ちなみに「整頓」とは、縦横きれいに一直線となるように並ぶこと。
横隊の部隊が「右向け右」を行った場合は、前の動作の逆の方法を行って4列となり、横隊の時向いていた方に整頓する。
第九十四 併立縦隊を整頓せしむるには通常目標を示し豫め嚮導 指揮班の曹長及び一般小隊の第一分隊長 を整頓線に就かしめ左の号令を下す
    右(左)へ 準へ
    直レ
「準へ」の動令にて中隊は銃を担うことなく行進し最後の一歩を縮めて止まり頭を右(第一列に在る者は其の儘其の右側に在る者は左)に廻し左手を腰に当て小歩にて静かに整頓し銃を下ろす此の際小隊の第一列に在る兵及び後尾の分隊長は先頭分隊長に重なり距離を取り他の者は前に重なり且つ第一列の方に整頓す
小隊長は要すれば後尾分隊長を整頓線に入れ後尾分隊長は整頓翼の小隊より正しく間隔を取り第一列の整頓を補助す
右(左)翼小隊の後方に在る先頭分隊長は正しく距離を取り前方小隊の第一列に重なり他の先頭分隊長は之を基準とし正しく間隔を取り整頓す其の他後方小隊及び指揮班の動作は一般小隊に同じ
「直レ」の号令にて頭を正面に復し左手を下ろす
其の位置に於いて整頓せしむる場合に於いては前諸項に準ず

併立縦隊の整頓
草案の頃まで「嚮導何歩前へ」という号令が記述されており、この号令で嚮導が数歩前進する。本操典では削除されているが、変わらず使われているようである。
「準へ」の動令で銃を担わず腰に支えて、嚮導である先頭分隊長(一般小隊の第一分隊長)が前に出ている歩数分前進し、最後の1歩を縮めて止まり、頭を右に廻して(第1列の兵はそのままで、第1列の右にいる分隊長や伝令等は左に廻す)左手を腰に当てて、小歩で静かに整頓して銃を下ろす。この時、小隊の第1列の兵と後尾の分隊長は、先頭分隊長に重なって距離を取る。その他の者は前に重なり第1列の方に整頓する。
後尾分隊長は、整頓翼(右へ準への場合は一番右の小隊)の小隊から正しく間隔をとって第1列の整頓を助ける。
直れ」の号令で頭を正面に向けて左手を下ろす。
その場で整頓する場合は、前進せずに上記の要領で整頓を行う。
整頓翼」は、嚮導がいる方の翼のこと。通常は右翼。

第九十五 併立縦隊の直行進は通常右翼小隊を基準とす
中隊長は号令を下すに方り通常基準小隊の行進目標を示す
基準小隊の嚮導は正規の歩長と速度とを保ちて目標に向かい又は真直に行進し他の嚮導は要すれば頭を右、左に廻し関係位置を保ちて行進す
各小隊及び指揮班の第一列に在る者は嚮導の進みたる線を蹈み他の者は前に重なり第一列の方に準いて行進す

併立縦隊の直行進
併立縦隊の直行進は、通常は右翼の小隊が基準となる。
中隊長は通常、基準小隊の行進目標を示して号令を下す。
目標〇〇 前へ 進め
基準小隊の嚮導(先頭分隊長)は、示された目標に向かうか、真っ直ぐに行進する。他の嚮導は必要であれば、頭を右、左に廻して整頓しながら行進する。
各小隊と指揮班の第1列にいる兵は、嚮導の進む線を踏んで行進し、他の兵(第2列以下)は第1列にならって行進する。

第九十六 行進間兵は歩長及び速度を斉一にし前の兵及び整頓すべき方の隣兵に注意し距離間隔を正しく保ち歩の違いたるときは蹈替を為す
蹈替を為すには後ろの足を前に引き著け前の足より行進す駈歩に在りては片足にて二歩行進す

第九十七 中(小)隊を停止せしむるには「中(小)隊 止レ」の号令を下す中(小)隊は停止し整頓す

行進と停止
行進は歩幅と速度を統一し、前の兵と整頓する右(左)の兵に注意して、距離間隔を保ち、他の兵と歩みが違う場合は蹈替を行う。
中(小)隊 止レ」の号令で部隊は停止し、整頓を行う。

第九十八 中隊を折敷(伏臥)せしむるには「折敷(伏せ)」の号令を下す
膝射(伏射)に準じ弾薬盒を左右に開くことなく姿勢を取り折敷に在りては銃は右膝の前に立て擲弾筒は右股に托し伏臥に在りては小銃(擲弾筒)は左前臂に載せ槓桿を上(転輪を右)にし軽機関銃は脚桿の基部を左手に托し槓桿を左にす但し行進しあるとき折敷に在りては臀を地に著けたる後銃を下ろし伏臥に在りては伏臥しつつ之を下ろす
折敷、伏臥より起つには「起テ」の号令にて不動の姿勢を取る
折敷、伏臥より行進するには予令にて起ち担銃を為し動令にて発進す
折敷及び伏臥は単に敏速に行い得るを以って度とす

折敷・伏臥
中隊を折敷・伏臥させるには、「折敷(伏せ)」の号令を下す。
膝射(伏臥の場合は伏射)に準じて、弾薬盒を左右に開かずに姿勢を取る。
折敷の場合は、銃を右膝の前に立て、擲弾筒手は擲弾筒を右ももに托す。
伏臥の場合は、小銃(擲弾筒)を左の前肘に載せて槓桿を上に、擲弾筒は転輪を右にする。軽機関銃は、脚桿の基部を左手に托して槓桿を左にする。

行進中に折敷を行う場合は、尻を地につけた後に銃を下ろす。伏臥の場合は、伏臥しつつ銃を下ろす。
折敷・伏臥から起つには「起テ」の号令で立って不動の姿勢をとる。
折敷・伏臥から行進をする場合は、予令で立ち、担え銃をして動令で前進する。

第九十九 方向を換うるには停止間に在りては銃を担うことなく行い駈歩を以って行うを要するときは予令の次に「駈歩」を加え行進間に在りては軸翼に在る指揮班(小隊)又は分隊長の外駈歩を用う
隊形を換うるには通常中隊長の命令に依り小隊長の号令にて行う

第百 縦隊の方向を換えしむるには左の号令を下す
    伍々右(左)へ 進メ
先頭伍は小なる円形を描く如く内側の者は最初の数歩を縮め外側の者は正規の歩長にて行進し常に旋回軸の方に整頓しつつ右(左)に方向を換え停止間に在りては行進を起こすと同時に以上の動作を為し続いて行進す各伍は前の伍と同所に到り同法にて方向を換う

縦隊の方向変換
伍々(くみぐみ)右(左)へ 進メ」の号令で先頭の伍は、前進と同時に右(左)に回る。内側の兵は最初の数歩の歩幅を縮め、外側は正規の歩幅で行進を行い、旋回の軸となる兵にならって整頓しながら旋回する。





第百一 併立縦隊の方向を換えしむるには左の号令を下す
    右(左)に方向を換へ 進メ
停止間に在りては軸翼に在る指揮班(小隊)は右(左)に方向を換え中隊の深さだけ新方向に進みて停止し他の小隊(指揮班)は逐次斉頭面に到りて停止し後方小隊は前方小隊又は指揮班に倣う
行進間に在りては前項と同要領にて方向を換え続いて行進す

併立縦隊の方向変換
併立縦隊で方向変換する場合は、以下の号令を下す。
右(左)に方向(むき)を換へ 進メ
停止している場合、旋回の軸となる指揮班または小隊は、方向変換後、中隊の長さの分だけ新しい方向へ前進して停止し、他の小隊等もこれに続いて前進し停止する。
行進中の場合も同様の要領で前進し、停止せず行進を続ける。


第百二 中隊縦隊の整頓は併立縦隊に準じ整頓翼分隊長の方に整頓す
後方小隊整頓翼の分隊長は正しく距離を取り前方の分隊長に重なる
整頓翼の分隊長は速やかに整頓の基礎を定むる為反対翼の分隊長を目標とし先ず己に近き二、三兵の位置を正し要すれば逐次整頓を正す
反対翼の分隊長は要すれば己に近き二、三兵の位置を正し整頓を補助す

中隊縦隊の整頓
併立縦隊に準じる。整頓翼にある分隊長を基準に整頓する。
後方小隊の整頓翼の分隊長は規定の距離をとって、前の分隊長に重なる。

第百三 中隊縦隊の直行進は通常右方に嚮導を取り其の行進目標を示す
嚮導は正規の歩長と速度とを保ち目標に向かい又は真直に行進し中隊は之に準いて行進す

第百四 中隊縦隊の方向を換えしむるには「右(左)に方向を換へ 進メ」の号令を下す
停止間に在りては先頭小隊の軸翼に在る分隊長は右(左)向を為し続いて行進し他の者は捷路(しょうろ)を経駈歩にて逐次新線に就き中隊の深さだけ新方向に行進し小隊長の指示にて停止し後方小隊、指揮班は先頭小隊と同所に到り先頭小隊と同法にて方向を換え新位置に就き各々整頓す
行進間に在りては前項と同要領にて方向を換え続いて行進す
重火器及び弾薬小隊の行動は併立縦隊のときに準ず

中隊縦隊の方向変換
中隊縦隊の方向変換は「右(左)に方向を換ヘ 進メ」の号令によって行う。
停止している場合は、先頭小隊の軸となる分隊長は「右(左)向け」をして行進する。他の兵は駈歩のちに速歩に移り、中隊の深さ(60歩以上)だけ前進し、小隊長の指示で停止する。
後方小隊と指揮班は、先頭小隊と同様に方向変換、行進して新しい位置で各々整頓を行う。
行進している場合は、動作後停止せずそのまま行進する。

第百五 叉銃(さじゅう)せしむるには指揮班及び一般小隊を横隊と為し左の号令を下す
    叉メ銃
奇数伍の前列兵(第四列の兵)は左手にて上帯の下を握り銃身を前にし床尾踵(しょうびしょう)を右足尖より床尾板の約二倍前に出し銃を左に傾く
偶数伍の前列兵(第三列の兵)は左手にて上帯の下を握り床尾踵を左足尖より床尾板の約二倍前に出し銃身を後ろにし右隣兵と槊(㮶)杖(さくじょう)を組み合わす
奇数伍の後列兵(第二列の兵)は左手にて右手の下を握り右足を蹈出し組みたる前列兵の槊杖に組み合わせ床尾踵を左隣兵との中央前に置く
偶数伍の後列兵(第一列の兵)は左手にて上帯の下を握り左足を蹈出し照星の下の所を組みたる槊杖に寄せ掛け銃は奇数伍の後列兵の銃に平行にす奇数伍の後列兵銃を持たざるときは偶数伍の後列兵其の銃を組む
前列兵中銃を持たざる者は適宜の兵より銃を受け取り叉銃す
左翼伍奇数なるときは適宜叉銃す又翼分隊長及び押伍列に在る者は列兵の叉銃を終わりたる後適宜銃を之に寄せ掛く但し一叉銃は五挺を超ゆべからず
著剣しあるとき叉銃するには前諸項に準じ鍔を組み合わす
軽機関銃を携行する兵は脚桿を開き概ね叉銃の線に準いて銃を地に置く
擲弾筒を手にしある兵は之を叉銃の内側に置く

叉銃
叉銃は基本的に4人一組で行う。指揮班、小隊を横隊にしてから「(く)メ銃(つつ)」の号令によって叉銃を行う。

奇数伍の前列兵(第四列の兵)は、左手で上帯の下を握り、銃身を前に出して、床尾踵(しょうびしょう)を右の足先から床尾板の約二倍だけ前に出して銃を左に傾ける。

偶数伍の前列兵(第三列の兵)は、左手で上帯の下を握り、床尾踵を左足先から床尾板の約二倍だけ前に出して、銃身を後ろにして右に傾けて、右隣の兵と槊杖(さくじょう)を組み合わせる。

奇数伍の後列兵(第二列の兵)は、左手で右手の下を握り、右足を踏み出して、既に組んである前列兵の槊杖と組み合わせて、床尾踵を左の隣兵との間の中央前に置く。

偶数伍の後列兵(第一列の兵)は、左手で上帯の下を握り、左足を踏み出して、照星の下の所を既に組んである槊杖に寄せ掛けて、銃は奇数伍の後列兵の銃と平行に置く。
奇数伍の後列兵が銃を持っていない場合は、偶数伍の後列兵の銃と組む。
前列兵が銃を持っていない場合は、 適当な兵から銃を受け取って叉銃する。

左翼伍が奇数の場合は、適宜に叉銃をする。翼分隊長と押伍は列兵の叉銃が終わってから、適宜銃を寄せ掛ける。ただし、一叉銃の銃は五挺を超えてはならない。
着剣している場合は、上記の動作と同様のことを行うが、銃を組み合わせる際は鍔を組み合わせる。
軽機関銃は、脚桿を開いて叉銃線に倣って地上に置く。擲弾筒は、叉銃の内側に置く。

第百六 叉銃を解くには「解ケ銃」の号令にて叉銃と概ね反対の順序に動作す

第百七 中隊を解散せしむるには「解(わか)レ」の号令を下す

第百八 中隊を集合せしむるには「集(あつま)レ」の号令を下す
基準小隊の先頭分隊長は速やかに中隊長の前に来り示されたる所に位置し他の者は併立縦隊の定位に就き整頓す叉銃して解散しあるときは直ちに叉銃の所に集まり小隊長の号令にて叉銃を解き定位に就く
併立縦隊以外の隊形の集合には「集レ」の号令の前に隊形を示す

中隊の集合解散
中隊を解散させる場合は、「解レ」。集合させる場合は、「集レ」。
「集レ」で集合となった際、隊形が示されない場合は併立縦隊で集合する。基準小隊の先頭分隊長は、すぐに中隊長の前に来て示された位置につき、兵は分隊長を基準に併立縦隊の定位に就いて整頓する。叉銃を行って解散していた場合は、すぐに叉銃の所に集まって、小隊長の号令で叉銃を解いて定位に就く。


以上、説明等は、
最新図解 陸軍模範兵教典』(1939)
最新図解 陸軍模範兵教典』(1941)
を基礎に作成した。

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