2015年2月1日日曜日

原則の説明 突撃に就て(二)

一、突撃準備

 諸兵種

突撃の機近づくに至れば
歩兵は其火力を最高度に発揚し予備隊は機を失せず第一線に近く位置す
砲兵は総ての手段を尽して彼我の状況特に友軍歩兵最前線の位置を確め決勝点に対し猛火を集中して敵を震駭せしむ
翼側に在る騎兵は為し得れば敵の側面及び背後等を攻撃して師団の戦闘を有利ならしむ(戦闘綱要第一〇四)

以上は遭遇戦及び陣地攻撃の両場合に共通する原則である。
次には戦闘綱要に示されている陣地攻撃の場合の突撃準備に関する原則を分かり易く掲げて見る。
戦闘綱要は其の第百三十一の第一項に於いて、突撃準備事項の種類を示し、第百三十一第二項、第百三十二、第百三十三、第百三十四に之が説明を掲げている。即ち第百三十一の第一項に掲げてある突撃準備の種類は左の四項である。

 一、優勢なる火力を以って敵を制圧すること。
 二、適時障害物を破壊すること。
 三、側防機能を制圧若しくは破壊すること。
 四、克く状況に適応する如く突撃の部署を為すこと。

而して右四項の説明は次の通りである。

一、優勢なる火力を以って敵を制圧すること。
 突撃の機近づくに至れば我が火力を最高度に発揚して敵を萎靡(いび)沈黙に陥らしむるを要す之が為師団長は所要に応じ砲兵に新たなる任務を課し歩、砲兵の各部隊は各種の方法を尽して火力の優越を期せざるべからず(第百三十一ノ二)

二、適時障害物を破壊すること。
  障害物破壊の時期及び方法並び破壊口の数は師団長の企図に基き状況特に障害物の種類、強度、位置及び我が砲兵力就中準備弾薬数並び戦車の有無等を考慮して定むべきものとす
 砲兵を以って障害物を破壊するは実施容易なるの利ありと雖も多数の砲兵殊に弾薬を要するを以って歩、工兵を以って破壊作業に依り又は両者を併用するを要すること多し
 而して両者を併用する場合砲兵をして単に重要なる方面の破壊に任ぜしむべきや或は縦い不完全なるも各方面に対して破壊を行い歩、工兵作業を以って之を補足し又は破壊口を増設せしむべきや等は各種の状況を考慮して定むべきものとす
 数線の鉄条網に対しては第一線鉄条網の破壊は通常歩、工兵をして之に任ぜしむるものとす
 突撃に先だち歩、工兵を以って障害物を破壊する場合に於いては此動作を妨害すべき敵特に機関銃に対し適切なる掩護の方法を講ずるを要す此際煙を利用するを可とす
 歩兵の攻撃前進間砲兵を以って障害物を破壊せしむる場合に於いては突撃前歩兵をして之が完了を待つ為長時間敵前近くに於て停止するの已むなきに至らしめざるを要す(第百三十二)

三、側防機能を制圧若しくは破壊すること。
 側防機能は豫め砲兵等を以って破壊するを可とするも其位置及び掩護の程度並び我が砲兵力等の関係に依り豫め之を破壊し難きものに対しては適時之を制圧する処置を講ずるを要す又突撃の直前若しくは突撃開始後不意に現出することあるべき側防機能特に機関銃に対し迅速に之を制圧し得べき準備を整えあること肝要なり(第百三十三)

四、克く状況に適応する如く突撃の部署を為すこと。
 各部隊の突撃部署は当時に於ける軍隊の配置を基礎とし状況特に障害物破壊口の数及び状態に適合する如く定むべきものとす此際各級指揮官は所要に応じ各々適切なる突撃掩護の処置を講じ突撃と掩護との関係を緊密ならしむるを要す
 戦車隊を配属せられたる部隊は之をして突撃部隊に最も危害を与うる敵就中側防機能等を破壊若くは制圧し或は障害物に通路を開設する等突撃準備を補備しつつ突撃を直接援助せしむる如く使用するを要す(第百三十四)

0 件のコメント:

コメントを投稿