重擲弾筒
第一款 筒ノ保持法
第百三十五 伏射及膝射に於ける筒保持の要領及び其の要点概ね第十九乃至第二十二図の如し
十年式擲弾筒を使用する場合に於ける筒の保持法も亦本要領に準ずるものとす
信号弾を発射する場合に於いては伏射を為し筒は略々垂直に保持するを要す
伏射状態での筒の保持
膝射状態での筒の保持
⇒射角について
・歩兵操典草案(1937)
第六十九 …筒を概ね四十五度の角度に保持し目標に注目す
・陸軍歩兵学校編 『戦闘各個教練ノ参考{小銃 擲弾筒 軽機関銃}第壱巻』(1938)p.55
三、射角
射角は概ね四十五度を基準とし一定なる如く筒を保持するを要す蓋し仮令(たとい)正確に四十五度ならざるも常に一定に保持せば射撃に何等支障なきも射角が発射毎に変らんが射撃修正混乱命中を期し得ざるに至るべし
・歩兵操典(1940)
第四十二 …筒を水平面に対し四十五度に保ち…目標に注目す
・陸軍歩兵学校編 『擲弾筒取扱上ノ参考』(1941)p.1
射 撃
四十五度の一定射角(信号弾に在りては略々垂直)を以って行い射距離の変換は薬室容積を変化せしむる方法に依る
・陸軍歩兵学校編 『歩兵教練ノ参考(各個教練) 第一巻』(1942)p.68
2、射角は常に四十五度を正確に保たしむ
之が為左臂を十分伸ばし左手は筒の略々中央を左上方より握り且つ止板位置を規正し常に此等の関係を一定ならしむるを要す…(以下規正修正等に関する記述)
・執筆者記載なし 「擲弾筒射撃講話」『兵学研究琢磨』に掲載された記事
一 筒の保持(典四二、範二ノ一三五)
筒を水平面に対して、確かに四十五度に保つと云うことは、擲弾筒射撃の基礎をなすものである。
そしてこの四十五度は厳格に四十五度であって、「約」や「概」や「通常」や「基準」ではないのである。筒を水平面に対して四十五度に保つには諸兵射撃教範(以下単に教範と称す)第二部第十九図乃至第二十二図に明示されて居る如く
1、左手を以て筒の略々中央を左上方より握って、左臂を十分伸すこと
2、伏射であるか、膝射であるかによって止板の位置を規正すること
の二つに依るものであって、言いかへれば、水平面に対し止板と左拳との関係位置を常に一定に保つことである。(範二ノ一三九)
・山崎慶一郎著 『歩兵隊第一期 初年兵教育』(1943)pp.142-143
一、射角の保持は常に心手期せずして正確に行い得るに至らざるべからず
之が為不断の演練を行い習性とならしむるを要す
二、右の目的上本課目には特に時間を配当すべきも一通要領を会得せば
爾後間稽古にて演練するを可とす
三、射角は正しきに越したることなきも器械を用いざる以上若干の誤差は免れ難し
然れども僅少の誤差は射程上大なる影響を与えざる所に本兵器の特徴あり其の関係左の如し
(1) 射程の増減
薬室容積変化に伴う瓦斯圧力の作用・・・・・・大
射角の増減・・・・・・・・・・・・・・・・・小
(註) 小銃は射角の増減が射程増減作用の総てなり
故に其の頭を以って擲弾筒を律するは大なる誤なり
(2) 四十五度より(+)、(-)、各五度附近迄は同一分画に於ける射程上の差異は僅少なり
夫れより弾丸を目標に導かざるは他に大なる原因あり
即ち目測誤差及び風の影響、弾薬の不良是なり
(3) 擲弾筒の如き曲射弾道の火器と小銃の如き平射弾道の火器とに於いて
同一角度の増減を以ってする射程上の影響は同日の談にあらず
右の如くなるを以って射角のみ如何に正しくとるも他の影響に依り正しく弾丸を目標に導くこと困難なると共に一方射角の僅少なる誤差は小銃の如く大なる影響を及さざる点に留意するを要す
故に擲弾筒の射角付与の要訣は四十五度にして一定(縦い誤差あるも常に同一方向にして概ね同量)なるを要す
第百三十六 分画の装定並に改装は正確機敏なるを要す
之が為転輪の操作は旋回方向をして心手期せずして逆鉤(ぎゃくこう)筒を移動せしめんとする方向に一致するに至らしむる如く習熟せしむること緊要なり
十年式擲弾筒に在りては駐環の緊定に方り回転筒の回転せざる如く而も敏速に動作し得る如く訓練するを要す
第百三十七 分画を装定するには右掌(てのひら)を以って転輪(※整度器)を回転せしめ逆鉤筒分画指示面を所望分画に一致せしむるものとす
而して十年式擲弾筒用弾薬(※曵火手榴弾)を使用する場合に於いては右方分画を、其の他の場合に於ては左方分画を使用するものとす
十年式擲弾筒の分画を装定するには先ず駐環を緩め回転筒を廻し所望の下方分画を其の矢標に一致せしめ次いで分画の移動せざる如く駐環を確実に緊定するものとす
信号弾射撃に於いては常に最大分画を使用するものとす
⇒分画の装定
柄桿には距離分画が表記されている。
転輪(整度器)を回転させると「撃茎筒」(撃茎が中に入っている)が上下に動く。
「撃茎筒」は「逆鉤筒」と「連結筒」によって連結されているため「逆鉤筒」も同様に上下に動く。
「逆鉤筒」には引鉄などがついており、引鉄の近くには”分画指示面”がある
柄桿に表記されている距離分画の内の「自分が射撃したい距離分画」を”分画指示面”が指すように転輪を回転して移動させることで分画を装定する。これによって擲弾筒の射距離が決まる。
転輪の操作は「押減ル」、「引増ス」とのこと。
擲弾筒の構造についての詳細は近代デジタルライブラリーで『擲弾筒取扱上ノ参考』が閲覧できるのでそちらを参照のこと。
転輪(整度器)を回転させると「撃茎筒」(撃茎が中に入っている)が上下に動く。
「撃茎筒」は「逆鉤筒」と「連結筒」によって連結されているため「逆鉤筒」も同様に上下に動く。
「逆鉤筒」には引鉄などがついており、引鉄の近くには”分画指示面”がある
柄桿に表記されている距離分画の内の「自分が射撃したい距離分画」を”分画指示面”が指すように転輪を回転して移動させることで分画を装定する。これによって擲弾筒の射距離が決まる。
転輪の操作は「押減ル」、「引増ス」とのこと。
擲弾筒の構造についての詳細は近代デジタルライブラリーで『擲弾筒取扱上ノ参考』が閲覧できるのでそちらを参照のこと。
第百三十八 方向照準を行うには照準面を正しく照準点に指向するものとす照準は通常左眼を以って行うを便とす
照準面⇒眼の位置と方向照準線とを含む垂直面
方向照準線⇒筒身の中央に引かれている線
方向照準線⇒筒身の中央に引かれている線
第百三十九 射角は如何なる場合に於いても心手期せずして四十五度となる如く筒を保持するを要す之が為水平面に対し駐板と左拳との関係位置を常に一定ならしむること緊要なり
第百四十 照準点は通常射手自ら選定すべきものにして射距離に応ずる偏流量を目標の左方に修正して決定し(十年式擲弾筒に在りては偏流の修正を要せず)風ある場合に於いては其の風向、風速に応ずる弾丸の偏移量を偏流量に加減して之を定むるものとす
射撃姿勢を取りたるとき直接目標を通視し得ざる場合に於いては目標と射撃位置とを通ずる線上に仮標を選定し之を基準として前項の要領に依り照準点を決定す
⇒照準及撃発
八九式重擲弾筒は腔綫(ライフリング)が施されている関係上、撃ち出された弾丸は真っ直ぐには飛ばない。
八九式重擲弾筒の腔綫は右転綫なので、弾丸は右回転しながら飛ぶ。右回転の場合は弾丸は右に流れる。この横に流れた量を定偏という。(非常に簡単な説明なので注意)
この定偏を密位で測ったものを偏流と呼ぶ。
正確な説明は『諸兵射撃教範 総則第一部 第一部 第一篇 第一章 第六』を参照。
こちらはアジア歴史資料センターで閲覧可。
⇒「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001719200、大日記甲輯昭和14年(防衛省防衛研究所)」
擲弾筒の偏流量も『諸兵射撃教範 総則第一部 第一部 第一篇 第一章 第六』に記述されている。
「諸兵射撃教範総則第一部」
『第六 九二式歩兵砲高射界、曲射砲及重擲弾筒に在りては偏流量著しく大にして射距離の増大に伴い漸次減少す』
その具体的な数値(略近値)は以下、
300m先の目標を射撃する場合、左に30密位ずらして照準・撃発を行わないと目標に命中しない。
ちなみに、この表はおおまかな数字であり、細かい数値は射表を参照する。(ということが書かれた資料があるので、おそらく擲弾筒にも詳細な射表が存在するのだろう)
また、擲弾筒は初速が小さいため風の影響を受けやすい。そのため、偏流に加えて風も考慮に入れて照準を行わなければならない。
横風1mに応ずる修正量の基準
200m付近 1密位
300m付近 2密位
400m付近 3密位
500m付近 4密位
300m付近で風速5mの場合、それだけで10密位(3m)も弾が流されることになる。これに加えて偏流も考慮に入れなければならない。仮に左からの風だった場合は12mも右に着弾するということになる。
また、風は真横から吹くとは限らない。斜めから吹くこともあるが、長くなるので割愛。
八九式重擲弾筒の腔綫は右転綫なので、弾丸は右回転しながら飛ぶ。右回転の場合は弾丸は右に流れる。この横に流れた量を定偏という。(非常に簡単な説明なので注意)
この定偏を密位で測ったものを偏流と呼ぶ。
正確な説明は『諸兵射撃教範 総則第一部 第一部 第一篇 第一章 第六』を参照。
こちらはアジア歴史資料センターで閲覧可。
⇒「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001719200、大日記甲輯昭和14年(防衛省防衛研究所)」
擲弾筒の偏流量も『諸兵射撃教範 総則第一部 第一部 第一篇 第一章 第六』に記述されている。
「諸兵射撃教範総則第一部」
『第六 九二式歩兵砲高射界、曲射砲及重擲弾筒に在りては偏流量著しく大にして射距離の増大に伴い漸次減少す』
その具体的な数値(略近値)は以下、
偏流修正量の基準
100m―200m 40密位
200m―400m 30密位
400m―800m 20密位 (諸兵射撃教範 総則第一部 第一表)
300m先の目標を射撃する場合、左に30密位ずらして照準・撃発を行わないと目標に命中しない。
ちなみに、この表はおおまかな数字であり、細かい数値は射表を参照する。(ということが書かれた資料があるので、おそらく擲弾筒にも詳細な射表が存在するのだろう)
また、擲弾筒は初速が小さいため風の影響を受けやすい。そのため、偏流に加えて風も考慮に入れて照準を行わなければならない。
横風1mに応ずる修正量の基準
200m付近 1密位
300m付近 2密位
400m付近 3密位
500m付近 4密位
300m付近で風速5mの場合、それだけで10密位(3m)も弾が流されることになる。これに加えて偏流も考慮に入れなければならない。仮に左からの風だった場合は12mも右に着弾するということになる。
また、風は真横から吹くとは限らない。斜めから吹くこともあるが、長くなるので割愛。
第百四十一 照準を行うに方り筒の上端眼と照準点とを連ぬる線の上(下)方に在りて照準著しく困難なる場合に於いては頭を上(下)げ或は一時筒を伏(起)す等の方法に依り照準を容易ならしむるを可とす
第百四十二 照準の際照準面垂直ならざるときは照準面の傾きたる方向に射弾を偏移せしむ
斯くの如き過失は筒の方向照準線の上端のみにて照準を行いたる場合に於いて生起し易し
第百四十五 撃発を行うには右手を以って引革(十年式擲弾筒に在りては拉縄)を確実に持ち筒の方向、射角を正確に保持したる儘(まま)之を引く
此の際引鉄の運動に基因する方向並びに射角上の筒の動搖を防止すること緊要なり
之が為先ず第一段(約四十五度)を引き続いて照準面上に於いて一挙に短切なる力を加うるを要す
撃発の際左手を以って過度に力を加え筒の方向を偏ぜざること、撃発の瞬時筒の扛起せざること、撃発せば直ちに引革を放つこと等に注意すべし
⇒撃発の要領
右画像を参照。
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