擔銃(担銃)
第十八 担銃を為さしむるには左の号令を下す
担へ銃(になえつつ)
右手にて銃を上げ銃身を概ね右に且つ垂直にし
拳を略々肩の高さにすると同時に左手にて照尺の下を握り
銃身を半ば前に向け
銃を少しく上ぐると同時に右臂を伸ばして食指と中指との間に床尾踵を置く如く床尾を握り
銃を右肩に担い銃身を上にすると同時に左手を遊底の上に置き
右上膊を軽く体に接し床尾の環を体より約十糎離し
銃を上衣の釦の線に平行せしめ
槓桿(てこ/こうかん)の高さを概ね第一、第二釦の中央にし
左手を下ろす
(図は青年教練指導草案 第一 <Ⅰ>)
立銃第十九 担銃より立銃を為さしむるには左の号令を下す
立テ銃(たてつつ)
右臂を伸ばして銃を下げ銃身を半ば右に向け
且つ概ね垂直にすると同時に左手にて照尺の下を握り
銃を少しく下げ銃身を右にすると同時に右手にて木被(もくひ)の所を握り
其の拳を略々肩の高さにし銃身を後ろにし之を下げ腰に支え同時に左手を下ろし
銃を静かに地に著(つ)く
学校教練必携 前編(術科之部)<Ⅱ>の担銃の図
⇒立銃は担銃の動作を反対から行えば良い。
速歩行進
第二十 行進は勇往邁進の気概あるを要す
速歩(はやあし)の一歩は踵より踵まで七十五糎を、速度は一分間百十四歩を基準とす
速歩行進を為さしむるには左の号令を下す
前へ 進メ
<Ⅱ>の徒手での速歩行進の図及び歩兵隊第一期初年兵教育の参考(1936)の執銃での速歩行進の図
<Ⅰ>の図 |
脚を前に出し之を伸ばしつつ蹈著(ふみつ)け
同時に概ね膕(ひかがみ)を伸ばし体の重みを之に移す
左足を蹈著くると同時に右足を地より離し左脚に就て示せる如く右脚を前に出して蹈著け行進を続け
頭を真直に保ち左臂(徒手に在りては両臂)を自然に振る
<Ⅰ>の図 |
第二十一 停止せしむるには左の号令を下す
分隊 止レ
後ろの足を一歩前に蹈出し次の足を引き著けて止まり立銃を為す
<Ⅰ>の図 |
第二十二 行進間右(左)向を為さしむるには左の号令を下す
右(左)向け前へ 進メ
左(右)足尖(あしさき)を内にして約半歩前に蹈著(ふみつ)け体を右(左)方に向け右(左)足より新方向に行進す
<Ⅰ>の図 |
第二十三 行進間後向を為さしむるには左の号令を下す
廻はれ右前へ 進メ
左足尖を内にして約半歩前に蹈著(ふみつ)け両足尖にて後ろに廻り続いて行進す
<Ⅰ>の図 |
第二十四 速歩行進間歩調を止めしむるには左の号令を下す
歩調止メ
正規の歩法に依ることなく速度の歩長と速度とにて行進す
再び正規の歩法を取らしむるには「歩調取レ」の号令を下す
⇒「速歩」は、腿を挙げて膕を伸ばして脚を踏みつける歩き方。
「歩調止め」の号令で歩幅や速度をそのままに、姿勢を崩さず普通のように楽に歩く。
駈歩行進
第二十五 駈歩(かけあし)の一歩は踵より踵迄約八十五糎、速度は一分間約百七十歩とす
駈歩行進を為さしむるには左の号令を下す
駈歩 進メ
<Ⅰ>と<Ⅱ>の駈歩行進の図
予令にて担銃を為し剣鞘(けんざや、鞘の字は歩兵操典の原文では”革へんに室”)を握り(徒手に在りては右手を握り腰の高さに上げ肘を後ろにすると共に左手にて剣鞘を握る)
動令にて両足を少しく屈めて右股を僅かに上げ前に蹈著(ふみつ)け次いで右脚を前に出し
体の重みを常に蹈著けたる足に移し左臂(徒手に在りては両臂)を自然に振り続いて行進す
最新図解陸軍模範兵教典(1941)の図
停止するには「分隊 止レ」の号令にて二歩行進し後ろの足を一歩前に蹈出し次の足を引き著けて止まり立銃を為す(徒手に在りては剣鞘を放つと共に右手を下ろす)
速歩に移るには「速歩 進メ」の号令にて二歩行進し速歩に移ると共に剣鞘を放ち続いて行進す
(徒手に在りては剣鞘を放つと共に右手を下ろす)
駈歩間ノ諸動作
第二十六 駈歩行進間の諸動作は速歩行進間に於ける要領に準ず
但し速歩に於けるよりも二歩多く行進したる後動作す
以上が歩兵操典の「第一章 基本 第二節 擔銃、立銃、行進」の内容。(一部省略)
また、歩兵操典では詳しく記述されていないものもいくつかある。
※歩兵操典草案では記述があったが、歩兵操典になって削られたものもある。
途歩(みちあし): 「歩調止め」と似ているが、必ずしも歩調を揃えなくて良い。また、話をすることも許される
足蹈(足踏み):その場で足踏み
蹈替(踏み替え):歩調がずれたときに他の人に合わせるために行うあの行動。
「速歩の踏替は左足を踏みつけると同時に、右足を左足の後ろに引きつけて、左足から踏み出す。此の動作を一挙動でやるのである。右足を使ってもよい。駈歩の踏替は片足でトン/\と二歩前進し反対の足から行進すればよい。踏替の号令はない。足の違ってゐる者は自分で踏替をするのである。」(最新図解陸軍模範兵教典)
斜行進:号令「斜に右(左)へ 進メ」
左(右)足を約半歩前に足先を内にして踏みつけ、体を半ば右(左)に向け、右(左)足より新方向へ行進す
斜行進から直行進にするには、号令「斜に左(右)へ 進メ」
「折敷」と「伏臥」は、もっと先、第二篇の中隊教練に記載されているが、各個教練でも使われているようなのでここでも触れる程度に扱う。
折敷(おりしけ) :号令「折敷」
伏臥(ふせ) :号令「伏せ」
左が<Ⅱ>の折敷の図と解説、右が<Ⅰ>の伏臥の図と解説
折敷と伏臥から起立させるには号令「起て」
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