2015年2月18日水曜日

基本各個教練(七) 擲弾筒の射撃姿勢・装填・射撃

基本各個教練

射撃

擲弾筒

第四十二 射撃姿勢を取らしむるには目標(方向)を示し左の号令を下す
     伏射(膝射)
不動の姿勢に在るとき目標(方向)を示さるるや先ず之に正対す

伏射の姿勢
伏射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ち

小銃手の伏射に準じ体を射撃方向に対し約十度に伏臥し

右手にて筒を前に据え右肘を地に著け

左手にて左上より筒身の略々中央を、

右手にて柄桿(へいかん)下部を握り

左臂を伸ばして筒を水平面に対し四十五度に保ち

右手にて引革を握り目標に注目す


膝射の姿勢
膝射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ち

小銃手の膝射に準じ右膝を地に著け

臀を右踵の上に落著け

止板(とめばん)前端概ね左足の内側中央に在る如く筒を据うるの外伏射に準ず








⇒上掲の図は全て最新図解陸軍模範兵教典(1939)のもの。
そのため、図も記述も歩兵操典草案に準じているが、射撃の姿勢の図については、小銃の有無以外に大きな差は無いと思われる。

歩兵操典草案(1937)では、擲弾筒での射撃姿勢をとる際に“銃を置く”という記述があることから、歩兵操典(1940)の施行まで、少なくとも教練の時には擲弾筒手は擲弾筒と小銃の両方を持っていた様である。
(右の2つの画像はどちらも最新図解陸軍模範兵教典のもの。ただし、右は1939年、左は1941年発行のもの)

装填

第四十三 装填は発射の直前に行う
装填するには弾薬手は弾薬を取り安全栓を抜き
装薬室を下にし弾軸を筒身に一致せしめて筒口に嵌(は)
食指にて肩部を圧して筒内に押込む
射手自ら装填するには右手にて弾薬を取り
安全栓(あんぜんせん)の紐を啣(くわ)へて抜きたる後装填す


⇒「安全栓」は信管についている安全装置。ヒモがついているのでそれを引っ張って抜く。
安全栓を抜かなかったり、弾薬を二重に装填したり、装薬室を上にして(弾薬を上下逆に)装填したという例も。

重量(弾量)標識符号
また、擲弾筒の弾薬も野砲などの弾薬と同じように弾量標識符号がついているらしい。(右画像)
ただし、右の画像のものは鋼製弾用のものなので、擲弾筒の弾薬には数値が違う別個の弾量標識符号があるかも知れない

弾量が違うと射撃結果が変化するので符号ごとに揃えておく必要がある。
つまり、運悪く「+」と「-」と「++」の3種類の重さの弾薬が中隊にある場合、第一小隊の擲弾分隊には「+」を、第二小隊の擲弾分隊には「-」を、第三小隊の擲弾分隊には「++」の弾薬。といった具合に分隊ごとに同じ弾量の弾薬を供給する必要がある。


射撃

第四十四 擲弾筒の射撃は指命射及び各個射とす
射撃せしむるには豫め距離分画(ぶんかく)を、榴弾以外の弾薬を使用するときは距離分画の前に弾種を号令す
射手は所命の分画を装し其の結果を報告し装填終れば「準備終リ」と報告す
指命射を為さしむるには例へば左の号令を下す
     第一 撃テ
射手は引革を引きて発射し射弾の方向を観測す
各個射を為さしむるには例えば左の号令を下す
     各個ニ三発 撃テ
射手は最大の速度にて所命の弾数を発射す終れば「撃終リ」と報告す


⇒「指命射」は分隊長が各筒を”指命”して射撃させる射撃方法。
各個射」は各筒が示された弾数を最大の速度で射撃する射撃方法。
それぞれの目的は、
指命射」は、分隊長が示した距離分画で射撃した際の着弾場所の確認のための射撃。
各個射」は、指命射で得られた結果を基に本格的に敵を叩くための言わば本射撃。
砲兵でいう「試射」と「効力射」といったところか。

擲弾筒の射撃は、面倒な分野の一つ。ここではこれくらいの説明で抑えておく。

ちなみに、歩兵操典草案(1937)だと指命射は「単射」、各個射は「連続射」。

不発

第四十五 不発のときは射手は数回引革を引き尚発火せざるときは「不発」と唱え弾薬を抽出す
弾薬を抽出するには射手は転輪を廻わし筒口より弾薬現るるや
弾薬手は信管に触れざる如く確実に之を握り徐(おもむ)ろに抽出し安全栓を挿す

射撃中止

第四十六 射撃を中止するには「撃方待テ」の号令を下す
射撃を止むるには「撃方止メ」の号令にて残弾あるときは之を抽出したる後
射手は距離分画を略々中央に復し右手にて柄桿(へいかん)上部を握り
小銃手の射撃を止むるときに準じ不動の姿勢に復す


⇒擲弾筒の各部名称は右の画像を参照のこと。

※操典中の「止板」は画像中の「支板」のこと。また、「止板」は歩兵操典草案では「駐板」と呼ばれている。
(画像は擲弾筒取扱上ノ参考(1941)のものだが、近代デジタルライブラリーでも確認できる1938年のものだと支板ではなく駐板となっている)


擲弾筒の射撃の詳細は諸兵射撃教範の方で扱っているので別個に扱う。
擲弾筒の筒の保持法・照準・射撃(別のタブ/ウィンドウで開きます)

歩兵操典の続きはこちら。

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