2015年2月12日木曜日

基本各個教練(四) 小銃の射撃姿勢

基本各個教練

射撃 要旨

第三十一 射撃は兵の動作中特に緊要なり故に綿密周到に教育し戦闘の為確乎たる基礎を作るを要す但し逆射(さかうち)の姿勢は其の要領を、立射の姿勢は単に其の概要を修得せしむるを以って足る
射撃教育に方(あた)りては装面して演練すること亦必要なり

第三十二 良好なる射撃姿勢は精熟せる据銃、照準、撃発と共に命中を良好ならしむるの基礎なり
射撃姿勢は兵の体格に良く適応し常に堅確にして而も凝ることなく自然の状態に在るを要す

小 銃

第三十三 射撃姿勢を取らしむるには目標を示し左の号令を下す但し対空射撃に方りては方向を示し射撃姿勢を取らしめたる後目標を示すことあり
     伏射(膝射)(逆射)(立射)
不動の姿勢に在るとき目標(方向)を示さるるや先ず之に正対す

伏射ノ姿勢(ねうち-の姿勢)

伏射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ち
左手にて弾薬盒を左右に開き
左足の約半歩右足尖の前に蹈(ふみ)出すと同時に上体を半ば右に向け
右膝より地に著け

左手を前に出し地に著け体を射撃方向に対し約三十度に伏臥(ふくが)
同時に右手ニて銃を前に出し左手にて概ね銃の重心の所を握り指を銃床の溝に置き
装填したる後右手にて稍々下より銃把を握り之を腮(あご)の稍前にし両肘を地に支え目標に注目す








膝射ノ姿勢(ひざうち-の姿勢)

膝射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ち
左手にて弾薬盒を左右に開き
左足を伏射に於ける如く蹈出(ふみだ)すと同時に上体を半ば右に向け



左手にて銃鞘を前に払い
右脚を曲げ其の股(もも)を目標の方向と概ね直角に平に地に著け
(しり)を右足の後ろにて地に著け
左脚を立て同時に右手にて銃を前に倒し
左手にて概ね銃の重心の所を握り

指を銃床の溝に置き其の前臂(ひじ)を左膝の上に置き
床尾板を右股(みぎもも)の内側に当て装填したる後
右手にて概ね右側面より銃把を握り
上体を自然の方向に概ね真直に保ち目標に注目す


逆射ノ姿勢(さかうち-の姿勢)

逆射の姿勢を取るには膝射に準じ
臀を地に著けつつ左手にて概ね銃の重心の所を握り
指を銃床の溝に置き仰臥(ぎょうが)
床尾を右腋下にし床嘴(しょうし)を地に著け
銃口を上にし装填したる後右手にて概ね右側面より銃把を握り
銃を地面に対し約六十度に保つ
後盒を有するときは先ず左手にて左に廻す

※左は青年教練指導草案 第一巻、右は青年学校教練教本

⇒1940年歩兵操典以前の操典の規定では銃は地面に対し約三十度となっている。
この図が載っている教本も1940年より以前のものなので、変更前の「地面に対し約30度」に準じているため注意。
また、逆射の姿勢は「据銃」の図で解説されているものがあるのでその点も注意。

立射ノ姿勢(たちうち-の姿勢)

立射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ち
右足尖にて半ば右に向きつつ左脚を約半歩左前に蹈出し
同時に右手にて銃を上げつつ前に倒し
左手にて概ね膝射の如く保ち
床鼻を右乳より少しく下にし床尾を体に接し
装填したる後右手にて概ね右側面より銃把を握り目標に注目す


射撃姿勢を取りたるとき逆射以外の姿勢に在りては銃口を概ね眼の高さにす
何れの姿勢に在りても右手の食指(ひとさしゆび)を用心鉄(ようじんがね)の内に入れて伸ばし
装填しあるときは撃発装置にす
又姿勢を取りたる後不具合を感ずるときは速かに修正す
膝射に在りては体格に依り臀を右足の上に載す

第三十五 射撃せしむるには予め照尺(射距離)を示し左の号令を下す
     撃 テ
連続して射撃を行う而して装填する毎に弾薬盒を閉じ留革を掛く

第三十六 射撃を中止せしむるには左の号令を下す
     撃方待テ
据銃前の姿勢に復し次発の準備を為す
射撃を止(や)めしむるには左の号令を下す
     撃方止メ
注目して安全装置にし照尺を旧(もと)に復し頭を目標の方向にし

伏射に在りては姿勢を取りたるときと概ね反対の順序にて上体を起し
左脚を約一歩前に蹈(ふみ)出して起ち
右足を引き著け弾薬盒を旧に復し、

膝射に在りては右手にて木被(もくひ)の所を握りて起ち
目標の方向に向きつつ右足を左足に引き著け
弾薬盒を旧に復し、

逆射に在りては右手にて体を起し
姿勢を取りたるときと概ね反対の順序にて起ち
右足を左足に引き著け、

立射に在りては右手にて木被の所を握り
左踵にて目標の方向に向きつつ右足を左足に引き著け不動の姿勢に復す



以上、歩兵操典の第一章 基本 第四節 射撃 要旨 小銃(狙撃眼鏡装脱は省略)
照準、撃発間の姿勢は「据銃(きょじゅう)」と言う。
据銃」は歩兵操典ではなく「諸兵射撃教範 第二部」の方で扱われているので、歩兵操典中の記述は少ない。この辺りは別個に扱うことにする。

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